さよならと嗤う | ナノ
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そして結局、キセキを順番に殺す事になったんですが…正直、いざ殺るとなるとやっぱり躊躇する。

そもそも、赤司と2人になるのもなんか気まずいし。



「いつでもいいですよ、志波さん」

「…あんた怖くないの? もし脱出が出来なかったらとか考えない訳?」

「不思議と怖くはないですね。それに志波さんは、嘘は言いませんから」

「わたし、猫被りのクソ嘘付きだけど」

「仮にあの本の脱出方法が志波さんが用意した偽物だとして、俺を殺すのにこんな躊躇しますか?」

「本当に可愛くねぇなお前」

「ふっ、志波さんには負けますよ」



そう言いながら、白いナイフを持つわたしの手に触れるとニコリと赤司が笑った。そしてゆっくりと自分の胸へと白いナイフを誘導して行き、ピタリと止まる。

本当に可愛くねぇ。
そしてやっぱりお前は嫌いだ。

なんでも見透かした様な顔しやがって。そんな、いかにも俺はあなたをわかってますみたいな顔をしても、わたしはお前が嫌いだからな。そういうところが嫌いだからな、クソが。

はぁ…本当に嫌だな。
なんで、こうやって現在進行形で話をしている相手を殺さなきゃならないんだ。



「んー、やはり背中からにしますか? 顔を見るのは辛くないですか」

「今更過ぎる事を言うんじゃないよ」

「志波さんの殺りやすい方でいいですよ」

「……後ろ向いて」

「わかりました」

「…痛くない訳ないけど、痛かったらごめん」

「大丈夫ですよ。志波さんも耐えてたじゃないですか」



そしてグダグダと会話をしていたせいで、かなりの時間を無駄にしている事に気付き、覚悟を決める。

ゆっくりとわたしに背を向ける赤司を見つめ深呼吸をする。

きっちり1発で仕留めないと、苦しませる事になるから…ナイフは横にして…肋に当たらない様に心臓を狙って。

……あぁ、もうっ…なんでこんな事を真剣に考えなきゃならないんだ。



「ナイフで即死を狙うのは難しいのはわかってるので、大丈夫ですよ」

「っ、うるさいな…もう、」

「余りにも志波さんが躊躇しているので」

「当たり前でしょ」

「……では、タイミングは志波さんに任せます。いつでもどうぞ」



っ、あぁ…もう本当に嫌だ。
幻覚を見せてくれ、それでゾンビか何かに見える様にしてくれ。

しかし、そんな事が出来る訳もなく…数歩後ろに下がりナイフを構え、勢いを付けて赤司に体当たりをする様にナイフを突き刺した。

嫌な感触と僅かに聞こえた痛みに耐える赤司の声に思わず、手を離すとゆっくりと赤司が振り返り酷く歪な笑みを浮かべ…倒れた。

そして赤司は、光のように消えてカランっと白いナイフが床に転がった。


順番待ちのキセキ
(お、遅くないッスか…?)
(そんなすぐに殺せる訳がないのだよ)
(あれでも女だしな)
(赤ちんがなかなか死なないとか?)
(なにそれ怖いッス…)
(まぁ、有りそうではある)
(峰ちんも死ななそうだよね〜)
(黄瀬はすぐ死にそうだけどな)
(なっ、失礼ッスよ!!)
(すぐ死ねる方が良くない? 痛いよ〜?)
(っぐ、痛いのは嫌ッスね)
(そのわりに呑気なのだよ)

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