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クローンが苦しんでた事は、痛いくらいわかった。
だが、わたしは許さないし同情もしない。というか、もはや怒りしかない。
尚、研究員に関しては気持ち悪い上にわたしの親を殺した重罪込みで、死んでざまぁみろと思った。お前のせいで、わたしはこんなにもクソみたいな性格になったんだぞ。
ま、それは別に不満はないんだけど。
「で、あっさり見付かって草。しかもまじで似てるし」
「頭ん中でキンキン騒ぐなクソ女、今ぶっ壊してあげますからねー」
「千夏が怖い」
「おら、このオルゴールが宝物なんだろ? 一緒に壊してあげますからねー。泣いて喜べ」
「もはや、千夏が怨念な件について」
図書室に来たのは、まぁ…いつもの6人です。はい、クソクズゲスの霧崎さんです。
そしてあっさりとベッドで横たわるクローンの本体と床に転がってる研究員の死体を見付けた訳だが、もうね…部屋の中が既に不快。
どんな独房だよ。
まぁ、このクローンはずっとこんな感じの部屋で、生活してたみたいだから仕方ないけど。
そもそも、クローンを造る事は非合法な訳だし。外に出せないのは当たり前なんだけどさ。
散らばる殴り書かれた紙には、研究員への思い、外への憧れ、わたしへの怨み。色々な事が書かれている。
そして、唯一まともな物と言えばこのオルゴールだ。それを持った瞬間に頭ん中でクローンの声がキンキンと響いて、頭が痛い。
はいはい、すみませんね。
もう触りませんよ。
クローンの近くにオルゴールを置いて、オルゴールを開けると流れてくるのは…ヨハン・パッヘルベルのカノンだ。
「だから、あの体を破棄してまでここに戻ったのか。大切なオルゴールに何かあったのかと思って」
「初めて貰った物なんだって。で、それを弾かせる辺り、やっぱりこの研究員はゲスだけどな」
「…千夏の妹だよって言われたら、普通に納得するレベルで似てるね」
「わたし妹より弟がいい。パシリにしたい」
「理由がクソ過ぎて笑う」
「はいはい、わかったよ。お父さんと一緒な、わかったから喚くな」
オルゴールの音を聴きながら " もう疲れた…眠りたい " とわたしより少し高いけどわたしと良く似た声が頭の中に響く。そして " お父さんと、お父さんと一緒がいい " と喚く。
はいはい、じゃあ仲良く地獄に落ちて下さいねー。
嫌々ながら、研究員の死体をクローンの近くまで引き摺り、おまけに手を繋がせてやった。わたしってまじ優しい。
そしてゆっくりとナイフホルダーから白いナイフを抜き取り、クローンに向かって笑顔を向ける。
「次は、ただの人間に成れるといいね」
「……ぁ…、…ぃ…と」
「わたしは嫌だよ。でもまぁ、気が付いたら挨拶くらいはしてやるよ」
「………ぅ…ぁ」
「おやすみ」
もう本当にほとんどの能力が使えなかったんだ。ずっと頭ん中で喚いてた時点で、なんとなく察してたけどさ。
" 愛と仲良くしてくれる? "
" ありがとう "
まるで言葉にはなってなかったけど、頭の中で確かにそう聞こえた。
そして、自分によく似たボロボロの少女の胸に白いナイフを突き刺した。
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