さよならと嗤う | ナノ
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とりあえず、千夏がわかる範囲というか説明出来る範囲で、クローンと研究員についてわかってる事を話した。



「ふぅん、怨念ねぇ。ま、でも強ち間違いじゃないっしょ」

「クローンが持ってる水晶玉も、五情だと " 怨 " だもんね」

「でもよ、あんなにお父さんお父さん言ってたのに普通殺すか?」

「だからでしょ。死んだら千夏を見なくなるし求める事もなくなるじゃん」

「じゃあ、最初からクローンは千夏に乗り移るとかじゃなくて…千夏を殺して、自分が愛されたかったって事?」

「多分ね。乗り移ったって結局は、わたしな訳だし。クローンが愛されてる訳じゃないじゃん?」



千夏の憶測込みの話では、研究員が失敗作だと千夏に成れないクローンを殺した。だが、そんな研究員にクローンは激しい悲しみと怨みを持ち…この世界に引き摺り込んだ。

まぁ…そこまでは、なんとなく想像はついた。

で、ここからが本題だ。
クローンは、ここでなら愛してもらえると思った。千夏がいない世界なら、自分を見てくれると愛してくれると思っていた。

だが、研究員はそれでも千夏を求めた。

その結果、クローンの怨みが暴走し自分を見てくれず愛してくれない研究員を殺した。

だが、それでもクローンの暴走は止まらず、千夏を殺せば自分は愛して貰えると信じていた。それは研究員が死んでいるとしても、千夏さえいなければ自分が1番になれると思っていた。

死んでいても研究員が自分を愛してくれると、クローンは信じて疑わずにいた…との事。



「あいつ、ずっと死体に話し掛けてんの。まぁ、あいつも死んでるから体とか動いてないんだけどさ」

「なにそれどういう状態」

「寝たまま、死体に話し掛けてるみたいな? で、あいつは研究員に、ここに引き摺り込んだ人間の記憶から情報を得て色々な話してんの」

「テレパシーみたいな?」

「いや、クローンは普通に話してたよ。研究員は完全に死んでるから、反応すらしてないけど」

「体を乗っ取るのは?」

「怨念だからね。死んだ人間の肉体を操ってるだけで、乗っ取ってる訳じゃないっぽい。ちなみにゾンビは元人間だったり、あいつの怨念から生まれたりって感じ? ニセモノもそれね」



まぁ、結局は…俺等には理解が出来ない様な世界な訳で、今更色々と考えたところで脱出方法は、1つしかねぇ。

仮にそれが嘘の可能性もあるが、何故か千夏は脱出は出来ると思うと断言していた。

…まぁ、脱出が出来るならなんでも構わねぇがな。



(なんか千夏さんが冷静過ぎて怖いんスけど)
(取り乱して発狂すればいいんか? あ?)
(あ、いつも千夏さんでした)
(理由がわかって、静かにキレてるだけでしょ)
(おい、的確に当ててくるのやめろよ)
(あ、怒ってたんスすね)
(本当にただ巻き込まれただけだったからね)
(更に巻き込まれた俺達には一言)
(どんまい、次があるよ)
(ふざけんなブス、次とか要らねぇんだよ)
(わたしだって要らねぇよ!)

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