37*(3/4)
っ、…マジでクソ。
止めどなく湧いて出て来るニセモノと、忘れた頃に不意打ちを仕掛けてくる化物クローン女。
もちろん、クローン女はボロボロのままの姿で、辛うじて人間だったかも知れない程度にしか原型を留めていない。
「千夏っ!!」
「っ、…くっ…ごめっ」
「…チッ、数が一気に増え始めたな。手榴弾はまだ温存したかったが…使うぞ」
「わかった、わたしが投げる」
「構わねぇが、直視すんなよ」
「しないよ。見たくないし」
一哉と弘が言ってたし。手榴弾だと爆散するから、かなり惨い事になるって。それをわかってて直視する程、わたしもバカじゃないしメンタルも強くない。
真がこちらに向かって来ている大量のニセモノを足止めしているので、素早くピンを抜いて手榴弾を投げる。
その瞬間、真がこちらに飛び退きわたしを軽く突き飛ばす。多分、わたしが少しでもその惨状を見ない様にしてくれたんだと思う。
だけど、それ以上にわたしの思考を奪う様に聞こえてくる断末魔に、銃を持っていた手が震えた。
違う、ニセモノだから、大丈夫…大丈夫だ。みんなは、死んでない。
「千夏、ノイズだ。まともに聞くな」
「わ、わかってる…けど」
「なら躊躇すんな。それが命取りになる事は、お前が1番わかってんだろ」
ダメだ、姿より何よりも声がわたしの思考を奪っていく。ニセモノだとわかっていても、あの声で助けを求められると…躊躇してしまう。
やっぱり、健ちゃんは正しかったんだなって…今更だけど思った。こうなるって、わかってたんだろうなぁ…健ちゃんは。
だけど、必死にわたしの気が狂わない様にいつも以上に饒舌な真に応える様に自分に言い聞かせた。
そして真がわたしに向かって来た、クローン女をナイフで応戦してる時だった。
「花宮! 千夏!!」
「っ! い、今吉さん? と紫原…なんでここに!?」
「っ…なんの用だ! こっちは見ての通り取り込み中だ、バァカ!」
「すまんな、千夏を借りてええか? 誰もピアノが弾けへんから、先に進まへんのや」
「はっ…そんくらいの事も出来ねぇのかよ。千夏、行って来い」
「でもわたしが行ったら!」
「こいつは、意地でも行かせねぇからさっさと行けブス」
「ほな紫原、頼むわ」
「うん、ほら行くよー」
「ちょ、ちょっと!!」
突然の今吉さんと紫原の登場に、正直ニセモノかわからなくて困惑してしまった。
しかし、どうやら本物らしく…音楽室にてピアノを弾かないとならないとの事。だけど、真を残して行きたくなくて躊躇していたら、それをわかっていた様に真が口を開いた。
そしてそれを聞いた今吉さんが紫原に声を掛けると、紫原がわたしの腕を掴み走り出した。
その手を振り払いたくても振り払えなかったのは、今吉さんがわたしの頭を撫でたから。
" 頼んだで "
やっぱり、今吉さんは狡い。
prev /
next