さよならと嗤う | ナノ
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あいつ、チョロ過ぎない? まんまとわたしと真に釣られて、姿を現した化物にちょっと驚いている。

そしてわたしが先を走り、真が後ろで銃を撃って牽制をしながら目的の場所まで走る。

わたしは、一時的に避難出来る図書室がある3Fがいいと思ったんだけど…真に避難する事態になってる時点でただの袋の鼠じゃねぇかと言われて、確かにと納得した。

その結果、最悪は体育館に逃げる事が1番早い1Fになったんだけど。音楽室には探索に入って貰わなくちゃならないから…音楽室から1番遠い保健室にて化物の相手をする事になっている。

もちろん、保健室内には出来る限り入らない様にしたい。変なギミックで真と離れ離れになったら困るからだ。

そして再度、銃声が鳴り響く。



「千夏、誰の声に聞こえた」

「……健ちゃん」

「健太郎はここにいねぇ、わかってんな」

「うん、大丈夫。保健室に着いたら、止まるよ」

「構えとけよ」

「ん、わかった」



背後から苦しむ健ちゃんの声が聞こえた。

もちろん、健ちゃんはここにはいない。そもそも、健ちゃんが向かうのは3Fの図書室だから、こっちまで来ないで階段に向かったはずだから。

さすがに姿は確認してないけど、みんなが相手にしていた物がどんだけ大変なのかわかった気がした。

だけど、そんな甘ったれた事を言ってる場合ではない。


保健室に着き、立ち止まってすぐに銃を構えて振り向く。



「……っ、」

「これが俺等が殺して来たニセモノだ。加減すんなよ」

「っ…はは、ほーんと趣味悪っ…」

「間違えたところで、俺には当たらねぇからな。躊躇すんなよ、向かって来る奴は全員殺せ」

「…そんな簡単に言わないでよね。ちょっと思ってたより、衝撃でかいんだから」

「俺の声だけ意識してろ。ニセモノの声は全部ノイズだ。返事くらいしてやるから、訳わかんなくなったら声掛けろ」

「いや、既に真のニセモノもいるんだけど。クソ過ぎない?」



銃を構えた先には、見慣れた顔があった。というか、知ってたしわかってたけど…そんなにバリエーションあるのかよ。服装は、霧崎の制服と用意されてた知らない制服だけど…怪我してる奴だったり、ピンピンしてる奴もいる。

そしてそんなニセモノ達に容赦なく銃を撃ち込む真は、無表情だ。

……なるほど。
一哉と弘はこれより酷いって言うんだから、困る。

そんな事を思いながら、こちらに向かって来る真と健ちゃんのニセモノを撃ち抜く。あぁ、本当に銃でよかった。



「ねぇ、真」

「あ?」

「一応聞くけど、真は誰に見えてるの?」

「……お前以外に誰がいるんだよ」

「…そっか。ていうか、みんなわたしの事大好きかよ」

「自惚れんなブス」

「だから、顔は可愛いって言ってんだろ」



うん…大丈夫、大丈夫だ。
アレはニセモノ。

真はわたしの隣にいる。

それにわたしが知ってる真は、あんなダサくないし。間抜けに撃ち抜かれたりしない。

一哉だって弘だって、健ちゃんや康次郎もそう。あんなだらしないニセモノと一緒にすんな、しね。



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