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そして健ちゃんが物凄く嫌な顔をしたかと思ったら、頭を抱えて黙ってしまった。そんなに嫌なのかよ。ていうか、健ちゃんちょっとメンタルやられ過ぎてない? まじで大丈夫?
「健ちゃん、そんなに嫌なの」
「嫌に決まってるでしょ。もう何回もニセモノとはいえ、千夏が死んでるところ見てるんだから。これが、現実になったらって考えたら…嫌でしょ」
「瀬戸がド正論過ぎて」
「ま、俺はちょっと感覚麻痺して来てるから瀬戸が普通だと思うよ。だから、毎回確認してるっしょ」
「…なんか、ごめん」
「俺の場合は、ニセモノと対峙した時1人だったし。その内、本物かニセモノか判断出来なくなりそうな位には殺してるからね、俺」
「ずっと平気そうなふりしてるけど、原とザキは俺なんかよりずっとダメージ酷いよ。もう色んな感覚が麻痺してるからね」
「ま、さすがにまだ平気だけどねー。それにここまで来たら、ニセモノは俺が担当するしかないし」
そんな事を言いながらヘラりと笑って見せる一哉に、わたしは笑えない。いや、まじで笑えないからね。
そんな酷い状態だったの。
だから、みんなわたしに何度も何度も触って確認する様にじゃれて来てたの。
…なら、尚更わたしが行かなきゃダメじゃん。わたしのニセモノがそんなに苦しめてるなら、わたしが行けばいいじゃん。
まぁ、多分…わたしの場合はニセモノは真達になるんだろうけどさ。…いや、それでいいんじゃないかな。最後の…予行練習になるじゃん。
「なら、わたし1人なら問題ないんじゃない。みんなは、わたしのニセモノを相手にしてたんでしょ? わたしだけなら、みんなはニセモノを見なくて済む訳だし」
「千夏、そうじゃなくて」
「だってさ、わたしはみんなを殺すのに慣れとかないとだし。脱出するのに必要な事でしょ」
「なぁ千夏、俺等はどうしたって最後に千夏に辛い事させなあかん。だから、それまで出来る限り辛い思いをさせたないんや。わかってくれるな?」
不意にポンッとわたしの頭に手を乗せて、子供をあやすように優しくお願いする様に言葉を掛けて来た今吉さんは狡い。
そんなの絶対に嫌ですって言わせない様にしてるじゃん。
一哉達がわたしの為とか言わないのは知ってるし、わかってる。だから、わたしもわたしの為にって言おうとしたのに…本当にこういう時の今吉さんは狡いし、嫌いだ。
わたし達の関係性をわかってるから余計な事は言わないけど、だからこそ…わたしがここで嫌だと言えない事もわかってる。
「ほんと、今吉さん嫌い」
「ははっ、嫌われてもーた」
「ま、花宮に頼んでみたら? そのかわり、俺は嫌だからね。攻撃当たらなくても、間違って撃ちたくない」
「さすがに花宮もダメって言うでしょ」
「いや、花宮だからわかんないっしょ。俺は絶対に嫌だけど、花宮なら気にしなさそうだし」
「俺と瀬戸も怪しいからな」
「はぁ…もうさぁ、千夏は本当に大人しくしててくれないよね」
そしてもう何度目かわからない健ちゃんの盛大な溜め息に、一哉と康次郎が " それこそ今更過ぎでしょ " とか言ってた。
だって嫌なんだもん。
で、今吉さんも " ほんまに困った後輩やなぁ〜 " なんて言いながらわたしの頭をわしゃわしゃと撫でた。
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