さよならと嗤う | ナノ
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ベッドで寝ながら、ここから脱出する条件を頭の中で確認する。

まずは、青・赤・白・黒の水晶玉を集める。そしてそれを前に手に入れた歪な箱にはめると…中には鍵とナイフが入ってるらしい。

鍵は中庭へのドアが開く鍵。そしてこのナイフがかなり重要っぽい。

まず、ナイフを手に入れたら…クローン女本体を見付けなきゃならない。で、このナイフで刺すと…水晶玉が出て来るからそれを手に入れなきゃならないらしい。

クローン女から水晶玉を手に入れたら、わたしがそのナイフで全員を殺してから…全ての水晶玉を持ち、中庭に行って中心にある大樹を背にして、最後にナイフで自分を刺せばいいらしい。


…ここは、あのクローン女が造り出した幻覚というか…夢というか、まぁそんな感じのファンタジー的な場所で。

現実ではないらしいけど…わたし達は意識だけここに連れて来られてる状態。で、あのクローンの目的は、わたしの中身を食べる事。というか、わたしを自分の一部にする事。

で、真達が巻き込まれたのは…わたしの周りの知識も欲しかった可能性が高いって書いてあった。最初は、わたしじゃなくて人間らしさ欲しさに色んな人間を食ってたみたいだし。

まぁ、それで…この異常な空間から脱出するには五行思想として…水晶玉が必要で。どうしたってまずは、水晶玉を見付けなきゃならない訳で…最後はクローン女を刺して水晶玉が集まる。

ていうか、脱出方法しか書いてないのが腹立つ。もっとさぁ…どうしてこうなったとか、詳しく書いてない訳?



「千夏さん、大丈夫ッスか?」

「……そのままそっくり返すわ」

「ははっ、俺は大丈夫ッスよー。もう大分、落ち着きましたし」

「あっそう」

「今、花宮さん達が全員に説明しに行ってるッスけど…本気でやるんすか?」

「お前は、ここに永住したいのかよ」

「そりゃあ嫌ッスけど。だけど、夢だけであんな状態になったのに…今度こそ本気で千夏さんが壊れそうで嫌ッス」



そりゃあ、わたしだって嫌だよ。なんで殺したくもない奴等を殺さなきゃならんのだ。しかも、 " わたしが " ってのが本当に質が悪い。ただ死ぬ事だけが条件ならまだよかったのにさぁ。まじで最悪。

しかも手榴弾は使用不可っぽいし。箱に入ってるナイフじゃないとダメとか、クソ過ぎじゃない?

せめて銃にしろよ。ふざけんな。

ベッドに力なく寝転がりながら、必死に自分を奮い立たせる。やらなくちゃいけない事で、わたしにしか出来ない事なんだから、嫌がってる場合じゃない。



「はい、全部読んだー。まじでクローンも研究員も有り得ねぇわー。まじで、千夏とばっちり過ぎて笑えない」

「尚、更にとばっちりの俺等」

「それな。つーか、そりゃあ瀬戸が嫌がって他に方法ないか探そうって言い出す訳だよなー」

「千夏、大丈夫かい? さすがの君でもかなり辛いものだろう」

「ナチュラルに呼び捨てすんな。どんなに辛くても嫌でも、ちゃんとやるから大丈夫」



ちなみに説明しに行ってるのは、司令塔3人と健ちゃんと弘。今吉さんと赤司は怪我も治ってないのに、わざわざ一緒に説明しに行くって付いてった感じだけど。

で、医務室にはわたし・一哉・康次郎・高尾・緑間・氷室・若松・青峰・実渕・黛さん・日向・伊月。そして氷室の付き添いの福井さんと紫原、青峰の付き添いの桃井がいる。

尚、ベッドが足りないので比較的怪我が軽い一哉と氷室、大分落ち着いた高尾と緑間が1つのベッドを2人で使ってる。まぁ、緑間以外は座ってるだけだから別に狭くはないだろうけど。まぁ、みんなもう意識はあるし安定してるから大丈夫だけどさ。

で、医務室にいた組は1番に脱出方法について真に説明されたから空気が重い訳ですよ。



(なぁ、志波…)
(なんですかー)
(最初からずっと無理させて来たのに、結局最後もお前頼りだ)
(何を今更、福井さんには期待してませんよ)
(おい、言い方)
(大丈夫ですってー。わたしってば、やる時はやる女なんで)
(ふっ、俺は貴重な体験が出来て嬉しいからドンとナイフで来い)
(ぶっ、古橋のブラッグジョークが千夏に突き刺さるぅ!!)
(うっせぇんだよ、お前等はよォ!)
(ぎゃはは、古橋さんと原さんまじぱねぇ!!)

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