さよならと嗤う | ナノ
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◆◇◆◇◆

*****


どうにか、古橋に支えられて体育館まで戻って来る事は出来た。

が、肝心の薬は手に入れていない。それどころか、まともに歩くのも辛いくらいには重傷だ。すぐに俺等に気付いた今吉さんが駆け寄って来て、珍しく焦った顔をして俺の見つめた。

…赤司、テメェもふざけた顔してんじゃねぇぞ。



「花宮さんっ…」

「チッ…見付かってねぇ、よ」

「っ、そんなボロボロになってまで探して…見付からへんかったんか」

「…はい。代わりにこれを。俺は、花宮を医務室に運ぶんで」

「…今吉さん、あいつは」

「気付いたら寝てて、すぐに起こしたんやけど…人形みたいになってもうて…もう大体の事はわからんくなってる。今、必死に高尾が寝かさん様にしとる」



…あのバカ、寝たの…かよ。
痛む体に鞭を打って、体育館端に視線を向けると遠目からでもわかるくらい、無表情の千夏が人形の様に座っていた。

…チッ。

とりあえず、このままだとまともに話せねぇ。仕方なく、今吉さんには千夏に付いててもらって…赤司でいいか。

すぐに俺の意図を汲み取ったというか、察したのか…赤司が古橋とは逆の方から俺を支えると医務室へ向かった。


◆◇◆◇◆


いてぇ…な、クソが。

医務室のベッドに寝かされ、古橋と赤司に酸を浴びて酷い火傷状態の俺は、濡れタオルで体を拭かれていた。



「なにが、あったんですか?」

「ゾンビを喰ってる化物に会ったんだ。それで…そいつは再生能力みたいなのがあるみたいでな、その核を花宮が破壊した時に酸が噴き出して…それを花宮は浴びた感じだ」

「…はっ、もしかしたら千夏と同じで痕だけ残るかもな」

「…確かに、その可能性は有ります。ですが、今はここに居てください」

「で、その箱だが…多分、水晶玉が必要だ」

「花宮さん! 起き上がらないで下さいっ!!」

「ベッドの上に居ればいいんだろ、ガタガタ言うな」



さすがに上は何も着れねぇな。色々と張り付くし。

古橋からタオルを受け取り、適当にじくじくと痛む箇所を拭きながら、化物からドロップした歪な形をした箱を見つめる。丸い窪みが4つがあって、鍵はないが箱は開かない。つまり、そういう事だろ。

だが、違う。

もちろん、脱出には必要なアイテムなんだろうが…今じゃねぇんだよ、クソが。



「それとこれは、湧きゾンビと硬化ゾンビからドロップした」

「黒いメモと小さな鍵、ですか」

「後、手榴弾は基本的にどんな相手にも有効そうで、銃も雑魚なら大体は1発で仕留められる」

「あぁ…化物に銃は効かなかったからな、手榴弾2つで吹き飛ばした」

「で、軽く動ける様になったらまたすぐ出る。今の事を今吉さんに報告しに行け」

「……わかりました。古橋さんもベッドで寝ていて下さい」

「あぁ、わかった」



とりあえず、報告すべき事はした。今は、すぐにでもこの怪我を治してまた探索に行かなきゃなんねぇんだ。

…時間が、時間がねぇ。

今吉さんの焦り具合を見る限り、千夏の状態はかなり深刻だ。既に精神が崩壊寸前のところまで来てる。

そもそも、なんもわからなくなってんなら俺等を見ても大丈夫なんじゃねぇの。知らねぇけど。

いや、逆に俺等を見て発狂して…精神破壊なんて事になる可能性もある。ふはっ…、あの女ならやりかねねぇ…だから、今はまだ近寄らねぇ方が吉か。


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