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そして静まり返る廊下に僅かに聞こえる、真と康次郎の荒い呼吸にハッと我に返る。
「ま、真っ」
「っ、はぁ…あ? んだよ」
「いや、何がどうなってんの?」
「いいから体育館に戻るぞ」
「ちょっと! 説明なし!?」
「うっせぇな、いいから走れ。またゾンビ来んぞ」
「なんでそんな事わかっ…うわぁ!!」
全く説明をしてくれない真にイラッとしつつも、また大量のゾンビに追われるのは嫌なので大人しく走った。なお、階段から落ち掛けたのは秘密である。
ちなみに康次郎は、ちゃんとわたしの後ろを走ってくれて後方確認をしてくれてた。一哉と弘は、マジで康次郎を見習うべき。
ていうか、真も康次郎もなんだかんだ身内には甘いよね。特に真は、自分の懐に入れたら文句は言いつつも、絶対に突き放したりしないし。
本当ならわたしを連れて行くのだって、面倒な筈だしね。現に全く役にも立ってないし。それでもこうして、腕まで引いてくれてる訳で…やっぱり嬉しいよね。いや、まぁ…絶対にありがとうとか言わないけど。
ちょっと安心した。
ゾンビに追われたり、腕を怪我をしたりで…ちょっと弱気になってたというか、思考が死んでた。
「花宮、第三波が来たぞ」
「チッ…思ってたよりはえーな。が、このまま行く」
「え、ちょ…放置すんの!?」
「ふはっ、千夏がヘバんなきゃ問題ねぇな」
「既に結構ギリギリなんですけど!?」
「ふっ…いつも千夏に戻ったか、ずっと気味が悪かったからな」
「おいこら康次郎」
そんな会話をしつつも、真はわたしの腕を引いて走ってくれたし、康次郎もずっとわたしの後ろにいてくれた。
…このツンデレ共め。
そして体育館への通路に着くってところで、わたし達を待ってたのか暇そうに座り込んでる一哉達が目に入った。
もちろん、一哉達もわたし達に気付いてすぐに立ち上がった。そして一哉がニヤリと笑ったのが見えたと思ったら、一哉と弘が凄い勢いで走って来た。
あれ、なんとなくデジャブ?
「つーか、どんだけ連れて来てんだって話〜」
「まっ、楽勝だろ!」
「古橋も行って来い」
「あぁ、わかった」
「えっ、ちょ…!?」
「お前は、体育館だっつーの」
そして肩にバットを乗せた一哉と弘が嬉々として、ゾンビに向かって行くのを真に腕を引かれながら見送った。ちなみに健ちゃんは、わたし達と一緒に体育館に戻るらしい。
…いやぁ、それにしても楽しんでんなぁ。
まぁ、一哉と弘が倒せるとわかった相手から逃げる訳がないのはわかるけど…相手はゾンビだからね。非現実的な物だからね。
なんて思ってたら、体育館に着いて一気に気が抜けた。
(あ? 何やってんだお前)
(…こ、腰抜けたんだけど)
(ふはっ、だせぇ)
(色々あったんだから仕方ないじゃん!!)
(面倒くせぇ事考えてんじゃねぇよ、バァカ)
(うっさい、クソ眉毛)
(んだと? …おい)
(っ…い、痛いっ痛い!!)
(テメェ…また腕掴んでたな?)
(だって痛かったし!)
(傷口が開くだろうが!)
(開いて水ぶっかけた奴が言う台詞か!)
(花宮も千夏も、落ち着いて)
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