さよならと嗤う | ナノ
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俺等が呼びに行くのは、千夏を刺激しそうなので高尾に今吉さんを呼びに行って貰い、暫くして今吉さんと高尾が走ってこちらに向かって来た。



「千夏の様子は?」

「…あれは、あかんわ。自分の事がわからんくて…めっちゃ怖がっとる」

「つーか、あれヤバくないッスか? 目が死んでたっつーか…まじで精神崩壊し掛けてますよね」

「だったら尚更、探索に行かせて貰う」

「…理由を教えてくれへんか。今の状態の千夏を置いてまで、霧崎全員で探索に行くんやから…それなりの理由があるんやろ?」



そりゃあそうだ。
普通だったら、あんな状態の千夏を1人で置いておくなんて事はしたくはない。

だが、あの状態の千夏を元に戻す可能性が少しでもあるなら…俺等はそっちに賭ける。

そして千夏の悪夢を見る原因がマネキンに攻撃されたせいかもしれない事と、あの痣が千夏の精神に異常をきたしている可能性があると説明した。

その上で、回復薬があるのだから…精神異常を治す薬がある可能性もあるんじゃないかという話になり、なら探しに行くという事になったと説明した。



「もちろん可能性は低い上に、そもそもそんなもんあるかもわからねぇ。だが、可能性があるなら俺等は行く」

「なるほど。確かに、ない話やないけど…そんな探索してる時間ないやろ」

「だから、悪いが他の探索はしねぇよ。時間が惜しいんでな、何か見つけても無視する。そもそも、後でまた取りに行けばいい話だしな」

「……わかった、許可するわ。せやけど、絶対に見付けて来るんやで」

「さぁな、ねぇもんはどうしたってねぇだろ。すぐ出る、武器は適当に赤司が持って来い。俺等が取りに行くと、バカ共が騒ぐからな」

「わかりました。人数分の銃とナイフで大丈夫ですか?」

「手榴弾もだ。時間が惜しいって言ってんだろ」



俺の言葉に赤司が頷き、高尾を連れて足早に武器庫に向かって行った。それを確認してからすぐに出られる様に原達の元へ向かおうと、今吉さんに背を向けると腕を掴まれた。

…多分、怒り。

微かに震える今吉さんの腕にゆっくりと振り返ると、中学時代に数回しか見た事がない本気で怒ってる時の今吉さんの顔がそこにはあった。

そりゃあ、あんたもそんな顔になるよなァ? 可愛い可愛い後輩が、あんな簡単にぶっ壊され掛けてんだからな。



「…あいつは、ワシが見張っとく。せやから、絶対に見付けて来てや」

「ふはっ…殺気バリバリ出して、逆に殺されない様にして下さいね、センパイ」

「アホか。今にも殺しそうな顔しとるお前には言われたないわ」

「まさか、今は殺しませんよ。今の内に喜ばせといて、最後に死ぬ程苦しませて絶望させて…ジワジワと殺してやるんで」

「愉しみにしとるわ」



ニコリととびきりの笑顔を向けると、今吉さんも気持ちの悪い胡散臭い笑みを返して来て、吹き出しそうになった。

おい、お前…喧嘩売る相手は選んだ方がいいぜ?

あからさまに嬉しそうに口元を歪ませている女を睨み、すぐに原達の元へ向かった。


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