さよならと嗤う | ナノ
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ザキから千夏の様子がおかしい、 " 酷く魘されていた " と言われて、嫌な予感はした。そして、案の定…あいつは俺を見るなり今にも泣きそうな顔をして俺を拒絶した。

酷く怯えたその表情に、すぐに今吉さんに千夏を頼んでその場から離れる。

アレは、ダメだ。
俺等がいたら、悪化する。



「なぁ、花宮…あれってさ」

「あ? 多分、そういう事だろ。そりゃあ、あいつに精神攻撃すんなら俺等が最適だろうからな」

「……千夏、大丈夫?」

「さぁな、だが…このままだと危ねぇかもな。さすがにあそこまで、取り乱してるのは見た事ねぇよ」

「あのさ、千夏は寝ると悪夢を見るって言ってたけど…最初にみんなでマットで寝た時は平気だったよね」



健太郎の言葉に記憶を辿る。

…確かに、最初に寝たのはあの時で…起きた時は腕が痛いとは言っていたが、特に魘されてもいなかったし、別に普通だった。

俺は、寝ずに起きていたから千夏が魘されていれば気付くはずだ。つまり、あの時は悪夢を見ていない可能性が高い。

…で、最初に千夏が魘されて嫌な夢を見たのは、



「マネキンに殺され掛けたあと…だよね。もしかしてさ、」

「…あぁ、そーいう感じ? なら痣が消えないのも納得」

「…その可能性は大いにあるな」

「あの痣が原因って事かよ。でもよ、回復薬でも医務室のベッドでもどうにもならねぇのに…どうしろってんだよっ!!」



確かに、あの痣が消えない理由は気になっていたが…そういう意味かよ。話を聞く限り、あのマネキンに攻撃されたのは千夏だけだ。

つまり、あのマネキンの攻撃が原因か? ゾンビに攻撃されて出来た怪我は、他の奴等を見ればわかるが…痕も残らず治ってる。

そんな事を考えていると医務室から赤司が出て来て、真っ直ぐとこっちに向かって走って来て…なんとなく察した。



「…花宮さん、今吉さんから志波さんの夢の内容を伝えてくれと言われたので」

「大体察しは付いてる。話せ」

「…どうやら、志波さんが花宮さん以外の皆さんを殺した様で…花宮さんに " ニセモノだったんだな " と言われナイフで」

「っ…あーもうわかった、もういい。聞きたくないからやめて」

「…あぁ、そりゃあ俺の手も払い除けるよな」

「千夏の…あの異常に怯えた表情はそういう事、ね…」



…チッ、思ってた以上にヘビーな夢見てんじゃねぇよ。しかも、自分が殺されるんじゃなくて…自分が原達を殺した挙げ句、最後は俺に殺されるとかいい趣味してんな。

…クソが、ふざけんな。
んなふざけた事、俺が言う訳ねぇだろ。

悪夢を見た後の千夏の異常思考は知ってる、だからあの取り乱し方はわかる。それに加えて、今回は夢と現実の区別が付かないくらいには、追い詰められてたんだろうな。

最高に気分が悪い。

全員が心底胸糞悪いといった顔をして黙っていると、医務室から人形の様にうつ向いたまま動かない千夏を抱えた今吉さんが出て来て、シャワー室に向かって行った。



(ねぇ、冷静でいたいのは山々だけどさぁ…殺していい?)
(いや、待てって…わかるけどよ!)
(でも、あんな千夏嫌っしょ?)
(原、落ち着きなよ。相手の思う壺だよ)
(っ…わかってる、けど)
(…あの怪我は、俺と原にも責任があるからな)
(なんなの…まじで、有り得ないんだけど)
(原…)
(……おい、赤司。探索に行かせろ)
(…メンバーは?)
(あ? わかりきってんだろ)
(…では、今吉さんが帰って来たら決めましょう)

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