さよならと嗤う | ナノ
23*(2/4)


もうまじで死にそう。

既に嘔吐く力もないのに、吐き気には勝てず腹部に痛みを感じながら、ない力を絞り出す様に嘔吐く。

疲れ過ぎて意識が朦朧としてきた。

そんな事をボーっと考えながら、吐き気と戦っているとバタバタと激しい足音と聞き慣れた声に何故か体が強張る。



「おい千夏、1回顔上げろ」

「……っ、む、り」

「吐いてもいいから顔上げろ」

「…っ…ほっ、といて…」

「は? なに言ってんの?」

「こりゃあ…きっつい精神攻撃されたみたいやなぁ」



……ヤバい、真が怖い。
声を聞いただけで、さっきの夢がフラッシュバックする。

顔を上げたらナイフ突き付けられたりしない? あの目でわたしの事…見てるんじゃないの。 やだ、見たくない。

ぎゅっと枕を握って顔を押し当てたまま蹲る。少ししたら落ち着くから、今はまじで放っておいて欲しい。今のわたしは、真達に何言うかわからないし、何するかわからない。

本当に自分がよくわからない。

なんて相変わらず、嘔吐きながら考えていたら…まぁ、無理矢理…枕ごと持ち上げられた挙げ句、枕を奪われた。

その結果、吐き気MAXで見たくなかった顔を見るはめになったわたしは、思わず真を突き飛ばした。



「っ…い、やだっ…!」

「……今吉さん、こいつの事頼んでいいですか」

「え、あぁ…ええけど」

「ちょ、花宮!」

「いいから、お前等も行くぞ。そいつが落ち着いたら呼んで下さい」

「あぁ、わかった」



うぇっ…まじで吐く。

真を突き飛ばした事よりも、吐き気が酷過ぎてそれどころではない。再び蹲り、必死に吐き気と戦う。

そしてさっきと打って変わり、周りが静かになったかと思ったらポンポンとわたしの頭を優しく撫でる感覚。何も言わないし、それ以外は何もしない。ただそのまま、わたしが落ち着くまでずっと頭を優しく撫でてくれた。


◆◇◆◇◆


暫くして、大分吐き気が落ち着いて来て…ゆっくりと顔を上げると今吉さんが困った様に笑い、既にぬるくなってしまったであろう水滴まみれのペットボトルを開けて渡してくれた。

それを受け取り、少量を口に含みゆっくりと飲み込む。まだ完全に吐き気が治まった訳じゃないので、余り勢いよく飲んだりしたくない。

その間も今吉さんは、何も言わずにただただわたしの側で座っていた。

そしてやっと呼吸も安定して来て、ゆっくりと口を開いた。



「…今吉さん」

「ん? まだ無理せんでええよ」

「もう、大丈夫…です」

「……ほな、シャワー行くか? 色々と気持ち悪いやろ」

「……まだ、いいです」

「わかった。それで、俺の事は大丈夫なん? 嫌やないか?」

「今吉さんは…大丈夫、です」



…大丈夫、大丈夫なはず。
今吉さんは、夢に出て来てない。だから、まだ吐き気は治らないけど…かなり落ち着いて話せる。

なんか周りからの視線がかなり気になるけど、何も言ってこない辺り…今吉さんが何か言ったのかな。多分、わたし…かなり異常な状態だったし。

まぁ、周りとか気にする余裕とかなかったけど。


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