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そしてむしゃむしゃと子猫が煮干しを食べている音だけが響く。
というか、古橋くんがわたしの名前を知ってる事に驚きなんだけど。いや、クラス同じだから当たり前と言われたらそれまでだけど…古橋くんって有名人だし。
それにあんまり女の子とかと話してるところ見たことないし。むしろ、わたしなんか初めて話したし。そんな事を思っていると、古橋くんが子猫の首根っこを掴みわたしの膝に乗せるとパンパンッと膝を払い立ち上がる。
「手を洗ってくる」
「あ、うん」
なんか律儀だな。
子猫は、お腹いっぱいになったのか頭を撫でてやるとゴロゴロと喉を鳴らしながら目を細めた。
暫くして古橋くんが帰ってきて、またわたしの隣に座る。
「あ、はい。子猫」
「?」
「わたし、そろそろ帰らなきゃだから」
「そうか。だが、俺もそろそろ帰る。あそこの段ボールに入れてやってくれ」
「段ボール?」
あそこだ。と指差す方を見ると確かに段ボールがある。頭を傾げながら膝の上でいつの間にか寝ていた子猫を優しく抱き抱えて段ボールの元に向かう。
そこには、"拾ってください"と書かれた段ボールにタオルケットが敷いてあった。
捨て猫だったんだ、この子。
ゆっくりと段ボールの中に子猫を入れてタオルケットを軽く掛けてから古橋くんの元に戻る。
「あの子、捨て猫なんだ」
「あぁ」
「子猫なのにね。1週間もエサあげてるなら古橋くんが飼えば?」
「俺も人に飼われてる身なんでな」
「…え?」
「いや、考えておく」
じゃあ。と言うとスタスタと去って行く古橋くんをただ呆然と見つめながら頭を傾げた。
やっぱり、よくわからない人だなぁ。なんとなく、猫好きなのはわかったけど。
そしてゆっくりと振り向き、もう一度段ボールの位置を見てからわたしも公園を後にした。
(ただいまー)
(なまえおかえりー)
(はぁ? なんでともだちが居んの!?)
(いや、遊びに来たんでしょ)
(あ、そうですか)
(なまえママが部屋いていいって)
(今更驚かないからいいよ)
(まぁ、家に帰りたくなくてさ)
(あー、なるほど)
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