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そして先程とはうってかわり、ミィミィと元気に鳴く子猫を膝の上に乗せて自分の髪の毛を猫じゃらしの様にして遊ばせていた。

必死に髪の毛に手を伸ばす子猫に自然と笑みが溢れる。

しかし急に子猫が動きをピタリと止めたかと思うと、わたしの膝から飛び降りてどこかに走っていき咄嗟にあたしも立ち上がり子猫が走っていった方に視線を向けるとそこには、誰かが立っていた。



「ミィ〜ミィ〜!」

「今日は、先客がいたのか」

「…ミィ〜?」



チラリとわたしを見るとゆっくりとこっちに歩いてくる男の子は、わたしの知っている人で…まともに話したことはないけれどクラスも同じなので間違えるはずはない。



「ふ、古橋くん?」

「なんだ?」

「え、いや…なんでもないけど」

「そうか」



そして会話が続かない。
というか、え、なんで隣に座ったの? 子猫は、何故か嬉しそうに古橋くんの膝に飛び乗るとすりすりと頬擦りをしていてそれはもう可愛くて…ってそうじゃなくて!

え、なにこの状況?


――――バッ!



「ひぃっ!?」


突然の謎の音に軽く混乱中のわたし盛大にビックリして、間抜けな声を出すと共に軽く飛び跳ねた。

ビクビクしながら古橋くんの方を見れば、何やらお菓子みたいな物を手にしていた。どうやら、あの袋を開けた音だったらしい。

そしてザァーっと大きな手のひらにその中身を出すと子猫の元に手を置いた。



「に、煮干し?」

「あぁ」

「な、なんで煮干しなんか持ってるの?」

「さっき買ってきたからだ。いつものコンビニに無くて少し時間が掛かった」

「そ、そうなんだ」



え、なんか会話がおかしくないかな? いや、この子猫の為に煮干しを買ってきたって事でいいのかな? てか、え? ホントなにこの状況。

古橋くんの膝の上でむしゃむしゃと煮干しを頬張る子猫を見ながら、混乱している頭を落ち着かせる。



「みょうじは、なんでこんなところにいるんだ」

「え、いや…家に帰る途中で子猫の鳴き声が聞こえて」

「そうか」

「古橋くんは?」

「1週間前くらいからこいつに煮干しをあげている」



ち、違うよ! そうじゃなくて! いや、1週間前くらいからこの子猫に餌をあげてるのはわかったけどさ。なんで餌をあげてるの? って事だったんだけど。

いや、まぁ…別にいいけどさ。

今日初めてまともに話したけど古橋くんは、よくわからないと思った。


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