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とりあえず、時間が時間なのですぐに作り始める。
が、何故か腕捲りをしてエプロンを身に付けている康くんがキッチンに入ってきて、手から茄子が転げ落ちた。
「どうした? 茄子が落ちたぞ」
「い、いや…なんでエプロン? え、康くん?」
「なまえの母さんから貰った物だ。なまえと一緒に着なさいって」
「え、一緒って…」
「なまえのエプロンは、これだぞ」
「ま、まさかのペアだった! てか、母さんなにしてんの!」
康くんは、わたしの背後に回ると薄いピンク色のエプロンをわたしの身に付けると満足そうに頷いた。
い、いや…嬉しいけど。
てか、母さんセンス有りすぎでしょ! 康くんのエプロンは、淡い水色でシンプルなんだけど小さな気泡の刺繍がしてあって…とりあえず似合い過ぎてる。
そしてあたしのは、それの薄いピンク色って感じ。
「それで一緒に料理を作ろうかと思ったんだが」
「う、うん…って、え?」
「なまえと出来る事なら料理だろうとなんだろうとやりたい」
「わ、わかった! じゃあ今日は、一緒に作ろう!」
「ちなみに俺は、全く料理出来ないからな」
「そのくらい知ってますよ!」
でもやる気はあるらしく、なにからやればいいんだ? なんて言いながら手を洗う康くんが可愛いやら愛おしいやらで顔がにやけるのを必死に我慢する。
今までにも何度か手伝おうか? と言って来た事はあったんだけど、本人が言ってた通り…康くんは全く料理が出来ないので色々と心配なんです。
だけど、エプロンまでしてヤル気満々な康くんに危ないから待っててとも言えない。というか、なんだかんだ言いつつわたしもこうして康くんとキッチンに立てるのは素直に嬉しいし。
「じゃあまずは、野菜とキノコを洗ってくれる?」
「洗えばいいんだな?」
「うん、えと…それで包丁は使える?」
「まともに使った事はないが多分、使えるんじゃないか?」
「…その多分が怖いんで一緒に切ろうか」
野菜とキノコを洗い終わり、野菜をまな板に乗せると康くんがぎこちなく包丁を持つ。
う、うわぁ…すっごい怖い。
そして康くんは左手も添えないでいきなり、真上から茄子をぶった切った。
「こ、康くん! ちょ、ちょっと落ち着こう。それと薪割りじゃないんだから、もう少しゆっくりね?」
「思った以上に怖いな」
「それわたしのセリフだよ!?」
でもやっぱりやる気はあるみたいなのでかなり体格的に辛いけど後ろに手を回して、康くんの手を掴んでゆっくりと切り方を教えてあげた。
ちなみにみじん切りとかはわたしは済ませた。さすがにまだみじん切りとかは、させたくないからね…。
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