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でも古橋くんは、なんでわたしにそんな話をしたんだろう。わたしは、気が利く子じゃないし…なんて言ってあげればいいのかわからない。

辛かったね? とか大変だったね? なんて軽々しく言える訳がないし。



「やっぱり気味が悪いか?」

「そ、そんな事ないよ…」

「じゃあどうした?」

「ごめんね。わたし古橋くんになんて言ってあげればいいのかわからない…」

「みょうじは、本当に優しいな」



そう言うと、マグカップに口を付けてミルクティーを飲む古橋くんに思わず目を反らす。

わたしは、優しくなんてない。

古橋くんにまともな言葉も掛けてあげられないし…今もどうしていいかわからない。



「みょうじに猫を飼えば? と言われた時に俺も飼われている身だからと言ったのを覚えているか?」

「…え、うん」

「そのあと、色々と考えたんだ。飼われてる身の俺が飼い主になれるのかと」

「うん」

「それで結局は、飼う事にしたんだが。その猫が自分の立場と同じと考えるとなんだか不思議な気分になったよ」



待って…なんでそういう考えになるの? つまり、古橋くんはこの子猫と自分が同じだって思ってるって事?

古橋くんの家庭事情は、さっき聞いた話だけだから詳しくはわからないけど。

むしろ、わたしは頭も良くないし、話がよく理解出来てないけど…



「わたしは、古橋くんと子猫は同じじゃないと思うよ」

「何故だ?」

「子猫の気持ちは猫じゃないからわからないけど、古橋くんは人間だし。ちゃんと思ってる事を言ってくれればわかる、し?」



あれ? わたしは、なに言ってるんだろう。自分で言ってて意味がわからないと思ってしまった。

むしろ、普通に意味がわからない。本当に何を言ってるだ…わたしは。

そんなわたしの言葉に古橋くんが目を丸くする。

というか、そんな古橋くんにわたしの方が目を丸くしてビックリした。



「参ったな」

「えと、なんかごめんなさい。自分で言ってて意味がわからなくなっちゃった」

「いや、気にしなくていい。つまり、俺が思ってる事を言えばいいんだろう?」

「え、あっ…うん?」

「俺は、みょうじが好きだ」

「・・・・・え?」



さすがのわたしもこの距離で聞き間違えたりは、しない。だけど…えっ?

ちょっと待って。
色々と待って。



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