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無事に部活が終わり、今は古橋くんと一緒に帰ってます。ちなみに原くんが俺も一緒に〜とか言ってたんだけど、花宮くんに止められてた。

だから古橋くんと2人で帰ってます。

いや、最初から古橋くんと2人で帰るつもりだったと言うか…予定だったので別に問題はないんだけど。

たまに古橋くんから話題を振ってくれたりして、いつもの様に会話をしながら歩いた。

そして大きなマンションに着くと、手慣れた手付きでセキュリティを解除して中に入っていく古橋くんに付いていくと一室に着いた。



「す、凄いところに住んでるんだね…」

「そうか? 適当に座っててくれ」

「え、あっ…うん」

「猫ならその内来る」



古橋くんは、リビングにわたしを通すとスポーツバッグを置いて、キッチンに入って行く。

とりあえず、床に座ってリビングをぐるりと見渡すが…なんと言うか物が少ない。

本当にここで生活をしているのか不思議なくらい綺麗だし、生活感がまるでない。

そんな事を思っていると聞き覚えのある鳴き声に視線を下ろすと、わたしの膝に擦り寄る子猫の姿があった。

そしてゆっくりと手を出すとニャーと小さく鳴くとわたしの膝に飛び乗ってくる。


ふふ、可愛いなぁ。
というか、本当に元気みたいでよかった。体の大きさは、余り変わっていないが鳴き声や動きは、公園で見た時とは全然違って元気そのものだった。



「飲み物は、ミルクティーで大丈夫だったか?」

「え、あっ…大丈夫だよ? すぐ帰るし! にゃんこ元気みたいでよかった」

「…もう帰るのか」

「え、だって…そんな長居したら悪いし。古橋くん部活で疲れてるでしょ?」

「俺は長居されても別に構わないが」



えと、なんか古橋くんの言ってる意味がよくわからないけど…つまり、そんなにすぐすぐ帰らなくてもいいからゆっくりしていけって事かな?

いや、でもわたしは猫の様子を見に来ただけなんだよね。それに古橋くんの家族が帰って来たりしたら気まずいし。

こんな高級マンションに1人暮らしって事はないだろうし。共働きなのかな?

そんな事を考えながら、膝の上でゴロゴロと喉を鳴らして目を細めているにゃんこの頭を撫でていた。



「えと、ほら…古橋くんの家族が帰って来たら大変だし」

「家族?」

「お母さんとか帰って来るでしょ?」

「…俺は1人暮らしだ」

「え?」

「小さい頃からずっと1人暮らしだ」



まさかの1人暮らしと言う言葉に顔を上げると、いつも無表情というか…表情が余り読めない古橋くんが辛そうな、悲しそうな顔をしていて思わず言葉を失った。



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