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正直なところ、火神はこのゲームをやりたくなった。なにが嫌だったって、今まさにこの状況になるのが嫌だったからだ。
隣には、頭から血を流し膝を付いたまま動けない黒子。
そしてなんの躊躇もなく俺等を襲って来た桃井とタツヤ…。いくらゲームだからってキツいものがある。
「ゲームって言ったって…!」
「っ…だから火神くんは、ダメなんですよ…。さっさと逃げて下さい」
「お前置いて逃げられっかよ!」
「これは、ゲームです…それに僕は多分もう無理です。ですが、君が勝てば…チームが勝てばいいんです。だから逃げて下さい」」
「ふふっ…やっぱりテツくんってカッコいい! 私に騙されないところとか…」
「…それは、ありがとうございます」
顔を赤くしながら嬉しそうに笑う桃井だったが、端から見れば悪魔にしか見えない。
しかし、火神は黒子と違いゲームと割り切れないのか心配そうに黒子を見つめる。
それに対して、ついに氷室が傘をぶん投げた。そしてそれを咄嗟に腕でガードする火神。
「はぁ…タイガには、ガッカリだよ。これなら先にタイガを殺っとくべきだった」
「…タツヤッ!」
「正直、興醒めだよ。さっさとどっかに行ってくれないかい?」
「…ホント、ですよっ…さっさとどっかに行ってください」
「まぁ、行かないなら殺るまでだけど」
「っ! 黒子、わりぃ…俺、お前の為にも勝つぜ!」
支給品の新しい傘を出した、氷室が怒りにも似た表情でジリジリと近付いて来るのを見て、火神はやっと決意をした。
助かる見込みはないと黒子本人は言っていたが、やはり置いて行くのには抵抗があった火神だったが、ここで2人してやられたらそれこそ黒子に怒られてしまう。
それに他のチームの仲間にも迷惑が掛かる…そう自分に言い聞かせた火神は、傷付いた黒子を残し走り去ったのだった。
「…あ、ありがとうございます」
「それ、殴った相手に言うセリフじゃないと思うけどね?」
「いえ、殴った事ではなく…あのまま火神くんも殺せるチャンスだったのに見逃してくれたじゃないですか」
「見逃したと言うよりは、殺るまでもないと思っただけだよ。全くあいつは、優しすぎていけないな」
「それは、氷室さんと桃井さんが躊躇いが無さすぎるだけですよ…」
そしてその言葉を最後に黒子は、地面に崩れると音もなく黒子の姿は消えた。
桃井が少しだけ悲しそうな顔をしていたが、殺ったのは俺だから気にしなくていいよ。と氷室が桃井の頭を撫でた。
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