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なかなか過酷な稽古だった。
というか、いつもの稽古より疲れた。
予想外の動きで、なまえさんの稽古着がずれたりずれたりずれたりして、俺は自分との戦いを強いられていた訳だ。
なんだ、あれか…新しい精神鍛練かなにかか。
そして今は、風呂で汗を流している訳だが…以前は、なまえさんの後に入ってしまい、色々と大変だった事を学び…今回は、俺が先に入っている。
本当なら、汗で冷えてしまう前になまえさんを先に入れてやりたかったが…そこは、仕方がない。
もちろん、長湯はせずに手早く済ませて、なまえさんが待つ居間へと向かう。
「出たんで、なまえさんもどうぞ」
「あ、夕飯だけど適当に使っていいって言われたから簡単に作っといたよ!」
「え、ありがとうございます」
「お風呂から出て、すぐ仕上げるだけだから待ってて! ばびゅんとシュパッと済ませて来るから!」
「いや、ちゃんと温まって来てください」
そして俺の言葉を聞いてたのか聞いてなかったのか、笑顔で走り去るなまえさんに少し頭を抱えた。
いや、まぁ…母さん達がいないって言うのもあるだろうが、もう少し警戒心とかないんだろうか。そもそも、親がいないって時点で色々ともう少し考えるべきだと思うが。
まぁ、なまえさんの事だから親がいないなら気を使わずに済む程度なんだろうが…問題は、そこじゃないんだよな。
なまえさん的には、友達ん家でお泊まり会感覚なんだろうな。とりあえず、俺はやっぱり異性として意識されてないのか。
いや、あのなまえさんの事だから、絶対に意識してないんじゃなくて、ただ単にお泊まりを楽しんでるだけだな。
そして暫くして、なまえさんは本当にあっという間にお風呂を済ませてきて、すぐに夕飯の準備をしてくれた。
なんというか、無駄がない。
まぁ、強いて言えば生乾きの髪の毛が気になるが…腹も減ってるしな。それに俺を待たせまいと急いで乾かしてくれたと考えれば、強くは言えないからな。
「はい、どうぞ! 簡単な物ばっかりだけど味は、保証する!」
「全部、作って貰ってすみません」
「いやいや! 泊めてもらう訳だし、このくらい余裕余裕!」
「最初は、帰るって言ってましたけどね」
「いや、だって親御さんいると思ってたし! それに親御さんがいたら緊張するし、なんか怖いでしょ!」
「まぁ、その気持ちはわからなくもないですが」
そもそも、親がいる状態で異性を泊める勇気があるやつはなかなかいないと思うんだが。
正式に付き合ってる相手や他にも友達がいるとかならまだわかるが、なまえさんとは付き合ってる訳じゃないからな。
つまり、親に説明のしようがない訳で…俺としても面倒だ。でもまぁ、親には友達が泊まりに来るとは言ってあるから問題はない。
別に、嘘は言ってないからな。
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