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あぁ、もう本当にこの人は…。これが俗にいう、ばかわいいって奴なのか。
隣の部屋に稽古着がある事を教えて、着替えを済ませたなまえさんの姿を見て俺は思わず頭を抱えた。
「どうどう?似合う?」
「いや、サイズがおかしいです」
「えっ、サイズとかあったの!?」
「それに着方も変です」
「柔道着なら着慣れてるんだけど、なんかこれややこしくない?」
「いやっ…、大して変わらないと思い、ますけど…」
「その笑いを堪えるのやめてくんない!?」
簡単に言えば、とにかく変なのだ。小さい子供が無理矢理、浴衣を着ているような…分かりやすく言うなれば、ぶかぶかな服を無理に着た感じだ。
つまり、体のサイズと稽古着の大きさが壊滅的に合ってない訳だ。
ぷんぷんと顔を赤くさせて怒っているなまえさんをもう少し見ていたいが、このままでは稽古は出来ないのでなまえさんを連れて隣の部屋へと向かう。
あぁ、なるほど。
確かに、パッと見だとサイズの違いはよくわからないな。それになまえさんの事だから、一番上に置いてあったのを普通に取ったんだろう。
「これがサイズSです」
「ちっさくない?」
「一応、男性用なので小さくはないかと」
「なるほど」
「下手にぶかぶかだと、動いている内に着崩れますし」
「ふむふむ。よし、着替えるぞー!」
「ちょっ、少しは躊躇して下さい!!」
そして新しい稽古着を渡すや否や、勢いよく稽古着の下を脱ぎ出すなまえさんにパッと背を向ける。
いくら、上がぶかぶかで下着が見えないからって目の前で脱ぐのは、どうかと思う。
いや、なまえさんの場合…すぐにでも着替えたいだけな気もする。
現に俺は、背を向けているだけなのに"あ、さっきよりフィットする〜"とか言ってる辺り、何も考えずに着替えているみたいだしな。
・・・なんだか、腹が立ってきたな。今すぐにでも振り返ってやろうか。
「ねぇ、わかちゃん」
「なんです?着替え終わったんですか」
「着替えたのはいいんだけど、やっぱりなんかサイズが合わないというか…」
「振り向きますよ?」
「おん」
「・・・・・」
「胸がきついんです、先生。しかも稽古着が上に上がっちゃって、変に胸元が開くんですよ…助けて下さい」
「そのまま死んでください」
「ファッ!?」
いや、むしろ俺を殺しに掛かるのはやめて欲しい。
確かに、なまえさんが着痩せするタイプなのを忘れてた俺も悪いが、平然とそんな格好を俺に見せるなまえさんも悪い。
ていうか、稽古着にエロさを出させるとかどんなだ。これから先、稽古をする度にこのなまえさんの姿を思い出して、稽古がやりにくくなるじゃないか。
そもそも、なんで下着なんだ。せめて、中になにか着てくれ。あれか、バカなのか。いや…なまえさんだし、バカだった。
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