君の視線の先に | ナノ

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旦那の命令で未来から来たとか言う、怪しい女を連れて帰った。

長時間雨に打たれ、俺様に引き摺られたせいもあってかなり汚れてたので、すぐに湯浴みに行かせた。

もちろん、女中じゃ危ないから俺様の部下のくのいち、律に頼んだ。

まあ、武器とか持ってなさそうだったし?体が動かないらしいから大丈夫だろうけど。怪しいのは、明確だからね。


そして、暫くすると律が戻ってくる。



「それで?」

「肩に墨が入っていました。しかし、本人は覚えがないとの事」



墨ねぇ?やっぱりどっかの間者か?それとも墨って事は、どっかのゴロツキか?



「墨は、濃紫で封印の印に似た模様で…触れてみましたがなにも起きませんでした」

「封印の印ねぇ。で、今は部屋に寝かせたの?」

「はい、まだ体が動かない様でしたので寝かせておきました。見張りは、才蔵さんと由利さんがしています」



まぁ、あの二人が見てるなら大丈夫か。まだ聞きたい事はあるし、後で旦那も連れていかなきゃなぁ。



「わかった、下がれ」



そう言ってすぐに旦那の元に行き、女がいる部屋に向かうと中から何やら唸り声がして旦那と顔を見合わせ、勢いよく襖を開けた。


「・・・・・」


そこには、変な顔をした女がいた。

多分、動きたいのに動けなくて必死にうーうーと唸りながら、どうにか動こうとしてるみたい。

・・・変な女。

そして、ゆっくり女に近付くとハッとした顔をして、恥ずかしそうに目を伏せた。

本当に何してんの、この子。



「まあ、いいや。で、あんた名前は?」

「小崎真歩」

「おぉ、姓持ちなのだな!某は、真田幸村。幸村と呼んでくれ!」


ちょ、旦那なに勝手に名乗ってんの?本当に危機感ないな、この人は。

ていうか、姓持ちだったの。

となると、更に怪しい。



「えっ?真田幸村って…あの有名な?」


しかも、旦那の事を知ってるらしいし、ますます怪しいよね。


「某を知っているのか?」

「武将の中でも凄い有名だよ。ていうか、そんな偉い人だったんだ。今まですみません」


いや、失礼だなこいつ。旦那をなんだと思ってたんだよ。


「え、偉くなどないで御座る!」

「幸村様って変わってますね。よく、こんな得体のしれない女を連れて帰りましたね。普通の武将なら殺すんじゃないでしょうか?」



本当にその通りだよ。

旦那は、色々と優し過ぎる。まぁ、そこに漬け込まれないように守るのが俺様だけど。


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