君の視線の先に | ナノ

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準備したお茶を持って行くと、軍神が縁側で一人庭先を見ていた。

まだ真歩ちゃんとかすがは、来ていないみたいだ。


「はい、どうぞー。お茶菓子とか勝手に持ってきちゃったけど、平気?」

「ぜんぜんかまいませんよ」

「ならいいんだけど」


ズズッーと躊躇なくお茶を飲む軍神に少しばかり吃驚する。

いや、もう少し警戒くらいしなよ、この人。

そういうところは、大将によく似てるけど。


「いまさらあなたがどくをもるいみもないでしょう。それに真歩がいますから」

「まぁね」


軍神には、何もかもお見通しか。

まぁ、盛るつもりなんて確かにないしね。同盟組んで早々そんな事する訳ないし。

そんな事を考えながらお茶を啜っていると、ドタドタと足音が聞こえてくる。


「すごーい!これ動きやすい!」

「こら、そんなに暴れるんじゃない」

「佐助、謙信様!見てみて〜!かすがにこれ借りたよ!」



―――ぶふぅっ


いきなりの真歩ちゃんの登場に、まさかの軍神までお茶を吹き出した。


「え…ちょ、なんで噴き出すの?かすが、変かなぁ?」

「いや、似合ってるぞ」


いや、確かに似合ってるけどさ。それは、不味いでしょ?

真歩ちゃんは、かすがの装束の色違いを着ていた。

いくらなんでも露出し過ぎ。

かすがは、ずっとそれだから慣れてるけど、真歩ちゃんは、駄目でしょ!


「いえいえ、すみません。真歩、にあってますよ」


ゲホゲホと咳き込む軍神。

えと、なんかごめん。俺様から謝っとく。


「よかったな、真歩!」

「うん!」


嬉しそうにと頷く真歩ちゃんに思わず、目を反らす。

あぁ…俺様、目のやり場に困る。真歩ちゃんが動く度に、揺れるその魔物に翻弄されっぱなしだ。

おかしいなぁ…かすがで見慣れてるはずなんだけどなぁ、俺様。


「あれ、佐助?どうしたの?大丈夫?」

「う、うわっ!なに真歩ちゃん…」


いきなり真歩ちゃんが目の前に現れてびっくりする。

てか、その装束で顔を覗き込むのやめてほしい。


「何じゃなくて…似合うかな?これ、かすがが昔着てたやつなんだって」

「いや、似合うけどさぁ…露出し過ぎじゃない?」

「それは、かすがも一緒じゃん。それに動き易いし、気にしない気にしない」


駄目だ、この子。

多分、俺様が何を言っても、通じる気がしない。

そんな格好で動き回るのは、かすがだけで十分なのに。

ていうか、本当に目の毒だから今すぐにでも着替えて欲しいくらいだからね。



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