君の視線の先に | ナノ

 01 (1/4)

―――・・・冷たい。


止めどなく降り注ぐ雨によってあたしは、重たい瞼を開けた。


「っ、・・・ここ、どこ?」


何故か、体が動かず目だけを動かしキョロキョロと回りを見るがよくわからない。どうやら、仰向けで転がってるらしく真っ黒な雲はよく見える。

・・・生き倒れ?

ていうか、あたしはなにしてたんだっけ?そもそも、外にいたっけ。

再び目を瞑り記憶を辿っていくが、

・・・・・。

何も思い出せない。
自分の名前は、覚えてるけど…今までどこで何をしていたのか、どうしてこんな場所にいるのか…全くわからない。


それに、なんで体が動かないんだろう。指を動かそうとしても動かない。

お腹空いてるとか…では、ないと思うけど。だけど、記憶が曖昧なせいで、自分がちゃんとした食事をしていたのかもわからない。


「むっ…さ、佐助!誰か倒れておるぞ!」

「えー?って…随分、派手に生き倒れてるね」


そんな事を考えていると、2つの足音がバチャバチャと近付いて来るのが聞こえた。

は、恥ずかしいけど…これで助かる。このままだと、雨に打たれ続けて風邪を引いてしまう。


「おーい。あんた、生きてるー?」

「な、なんと女子ではないか!」


な、なんとか生きてますよ。

ゆっくりと視線を動かすと、そこには橙色の髪で迷彩のぽんちょを着た不思議な男の人。

その隣には、今にも泣きそうな顔をしている、仔犬みたいに可愛らしい長髪の男の子。


「あ、生きてたんだ」


し、失礼な。

そもそも、こんなところで死んでたら、色々と問題だと思う。


「しかし、この辺りでは見たい顔で御座るな」

「服装も変だし、あんた何者?」


えっ?あたしの顔を見た事がないって…もしかして、この辺りって小さな町とかなのかな?あたしが余所者みたいな…たまに田舎である感じの。

となると、やっぱりここはあたしの知らない場所なのかな。全然、人通りもないし。

それにしても、服装が変って…そんなにおかしな格好をしてたかな…あたし。多分、それなりに普通の格好だと思うんだけど。

体が動かないから確認は、出来ないけど…多分、雨に濡れて重たい感じからしてパーカーに…脚にぬかるんだ土の嫌な感触がするからスカート…だと思う。

そして、何も言わないあたしに痺れを切らせたのか、ぽんちょの男の人がうっすら笑うと首筋になにかをあてがった。


「ねぇ、質問に答えてくれるー?」

「なっ、佐助やめろ!相手は、女子ぞ!」


視線を出来る限り下げるが、まるで見えない。何かが、首筋にあてがわれてるのかわかるけど…もしかして、刃物?

この人、笑顔が怖い。
目が笑ってない。

これを殺気と言うのだろうか?蛇に睨まれた蛙状態だ。もしかして、この人達危ない人だったのかな。

ど、どうしよう。
だけど、あたしの体は相変わらず全く動かないし。どうしたらいいの。


「あんた聞いてる?」


声に反応してぽんちょの男の人に視線を向けば、相変わらず氷の様に冷たい笑顔。


「き、聞いてます」


ちゃんと返事をしたのに、何故か…グイッと首筋に当てているものに力が入り、ゾクリとした。

あたし、殺されちゃうのかな。


prev / next