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目が覚めたら、既に佐助の姿はなかった。
そして布団に横になったまま、ボーッとしていると誰かの視線を感じて、また監視されてるんだなぁと思った。
あたしが危険人物なのは、変わりないし…何より、一回逃げ出したし、当たり前だと思うけど。
だけど、今は逃げようと思ったところで逃げられないし。そもそも、もう逃げる気はない。
それよりも、監視してるのがバレてる時点で姿を隠してる意味はあるんだろうか?
「あ、あの…監視役の人。監視をしてるのは、わかってるんで…よかったら姿を見せてくれませんか?」
それに勝手に逃げ出した事も謝りたい。
そして、ゆっくり起き上がり返事を待つが反応がない。
・・・なんか恥ずかしい。
もしかして、あたしが逃げ出した事で更に警戒してるのだろうか。だったら、返事なんてしてくれる訳ないよね。
「あ、あの…じゃあそのままでいいんで、聞いて下さい」
するとカタッと天井から音がして一つ影が降りてきた。
「うわっ…び、びっくりした」
「お前が降りてきてって言ったんだろーが。で、なんだよ?」
天井から現れたのは、なんか女の子みたいな人だった。
左右の瞳の色が違って、顔にタトゥー?みたいな模様がある人で、長い赤紫色の髪で可愛らしい顔をしている。
だけど、声色と口調を聞く限りどうやら、男の人みたいだ。
「えーと…もう一人いませんか?あなただけ…ですか?」
「あぁ〜。おい、才蔵も降りて来い」
どうやら、もう一人の忍さんは、才蔵と言うらしい。
そして暫くしてスッと影が降りてくる。
う、うわぁ…美少年とは、この事をいうのかな。赤紫色の髪の人とはまた違って、綺麗な顔立ちだと思う。
前髪が長くて右目が見えないけど…なんだから落ち着いた雰囲気の人だと感じた。
「えーと…あたしは、小崎真歩です。お二人の名前は?」
「あー…由利鎌之助。てか、なんか用があるんじゃねぇのかよ?」
「え、いや…はい」
「…俺は、霧隠才蔵」
「由利さんと霧隠さん。えと、あの…先日は逃げ出したりしてすみませんでした」
ゆっくりと二人に頭を下げる。
多分だけど、あの時…あたしを監視してたのもこの二人な気がするから。
「ぶはっ、お前変な奴だな。普通、忍に謝る奴なんていねぇよ」
「えっ、そうなんですか?だけど、迷惑を掛けてすみませんでした」
何故か、謝っているのにケタケタと笑う由利さんにちょっとムッとしつつ、再び頭を下げるとガシッと頭を鷲掴みにされ、ぐいっと頭を上げられる。
「あんた、気に入った。後、鎌之助って呼べ。由利って言われんの嫌いなんだよ」
ニヤリと笑いながらそう言った由利さんは、ガシガシとあたしの頭を撫でた。
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