君の視線の先に | ナノ

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結局、印が暴走する理由はわからずに日ばかりが過ぎた。



「真歩ちゃん入るよー」


いつものように真歩ちゃんの部屋に行けば、そこには既に旦那がいて嬉しそうに話をしていた。


「おぉ、佐助!どうしたのだ?」


まぁ、随分と嬉しそうだ事。

真歩ちゃんも満更でもなさそうだし。それに前みたいに無理に笑うの事も、かなり減った気もする。



「才蔵から薬貰って来たから持って来ただけ。ていうか、昨日やっと熱が下がったばっかりなんだから、真歩ちゃんはまだ寝てなさい」



真歩ちゃんは俺に斬られた翌日から、怪我による熱でずっと魘されていた。

それが昨日やっと熱が引いたと思ったら、もうこうして体を起こして旦那と呑気に雑談中と来たもんだ。



「大丈夫だってば。佐助は、心配し過ぎなんだよ」

「うむ。寝てばかりも良くない。怪我に響かないのであれば、心配なかろう」

「そうだよ。ただ話してるだけだし」



いや、一応やったの俺だし。気にするでしょ、普通に。

でもまぁ…顔色も良いみたいだし、旦那も元気になったみたいだからいっか。

真歩ちゃんが熱で寝込んでる時の旦那と言ったらもう…ずっと真歩ちゃんに付いてる聞かないし。

本当に大変だったなぁ…とか思ってると、律がスッと背後に現れる。



「どうした、報告か?」


律になにかを頼んだ覚えないんだけど。


「いえ、幸村様へ文を届けに…」


"誰から?"と聞くとどうやら大将らしい。

その言葉に旦那が凄い勢いで律に駆け寄り文を受けとる。

その瞬間、律は膝をついたまま姿を消した。



「…本当に佐助って忍っぽくないよね。目立つし…お喋りだし、そもそも忍んでないし」



ちょ、そんな目で見ない欲しい。てか、酷い言われ様だよ…。まぁ…確かに、言い返せないけどさ。



「ほら、俺様天才だから嫌でも目立っちゃう的な?」

「・・・わぁ。それに節操がないって話だし…本当に忍なのかも怪しいよね」



ちょ、その軽蔑した目で見るのやめてくれる!?ていうか、て節操がないとか誰から聞いたの?

いや、これはどう考えても…チラッと旦那を見れば、真歩ちゃんが笑顔でコクりと頷く。



「ちょっと旦那ぁ〜真歩ちゃんに何を話したの?」



文を読み終えた旦那に向かって言えば、嬉しそうにこちらを向いた。

ちょ、なんでそんな笑顔なのよ。



「真歩、お館様が顔を見に上田に来るそうだ!しかも今日中に着くみたいだ!」

「えぇっ!?ちょっと俺様聞いてないよ!?」



しかし、そんな俺様の言葉を無視して真歩ちゃんに"また来るで御座る!"と嬉しそうに言うと、"お館様ぁぁあ!"と叫びながら部屋を飛び出して行った。


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