君の視線の先に | ナノ

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真歩ちゃんの全ての手当てが終わって、旦那のところに戻ろうと立ち上がると真歩ちゃんに裾を引っ張られて振り返る。



「なに、どうしたの?」



顔を伏せたまま俺様の裾を握っている真歩ちゃんは、何か言いたいのか黙ってしまう。



「どっか痛いの?」

「ううん…やっぱり、なんでもない」



そう言って手を離す真歩ちゃんに頭を傾げながら、部屋を出た。

真歩ちゃんの監視は才蔵と鎌之助に頼んで、急いで旦那の部屋に向かった。

部屋に着くとまだ海野が旦那に報告をしている最中だった。

どんだけ長いんだよ。



「…佐助か。真歩の様子は?」

「今は、落ち着いたよ。気は失ってないけど布団で休ませてる」

「うむ、そうか…」



なに、どうしたの?そんな暗い顔しちゃって。



「佐助、新しい情報なんだが…真歩ちゃんが召喚された理由なんだけど」



そして海野が珍しく真剣でいて、悲しそうな顔で話始めた。

真歩ちゃんが召喚された理由に思わず目を見開く。



「じゃあ、真歩ちゃんが強く死を望んでいたって事?」



海野の話によると召喚する人間の条件を聞いたところ、己の死を望み、死を恐れず、どんな状況も耐えれる我慢強さを持っているが精神力が脆く扱い易い人物だと言ったらしい。

そして、ほとんどの記憶を召喚された時に失う為、この世に未練もない状態らしい。

だから真歩ちゃんは、何もわからないって言ってたのか。

それに真歩ちゃんが、簡単に自分の命を差し出してた理由も段々とわかって来た。



「ちなみに織田は、真歩ちゃんの姿を知らない。だけど、探し回ってるみたいだから…見付かるのも時間の問題だと思う」



姿を知らないだけでかなりありがたいけど。本格的に面倒になってきたな。

迷惑を掛けたくないか…。

なにも覚えない自分が何をするかわからないから、俺達を思って言ってくれてたのか。



「それに見付からないと無理矢理呪囚の力を強め、完全に操れるようにして呼びつける予定らしい」



ふーん、なるほどねぇ。

呪囚は、念じれば操れるからね。広がっちゃえばすぐにでも真歩ちゃんを手に入れられる訳だ。



「だからさっき長かったのか」

「なにがで御座るか?」

「いつもより呪囚の力が引くのが遅かったんだよね。まぁ、押さえ込んだけど」



相手も真歩ちゃんを取られる訳にいかないって、必死なのがわかるね。



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