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そして翌日の子の刻。
「本当に気を付けるで御座るよ…。もしなにかあれば佐助を置いて、逃げてもいいで御座る」
ちょ、旦那それは酷い。
いや、まぁ…俺様なら大丈夫って、思ってくれてるんだろうけどさ。
「大丈夫だよ。奥州の独眼竜は幸村の好敵手で、越後の軍神はお館様の好敵手なんでしょ?」
「う、うむ…確かにそうで御座るが…」
「余裕だよ。任せて!」
いやいや、その自信は一体どっから来るのよ。
まあ、確かにそこまで気を張る相手じゃないけど、用心しなきゃならないのも事実だからね。
「うぬ…気を付けるのだぞ。佐助、真歩を頼むぞ」
「了解」
特に竜の旦那は、好戦的だからめんどくさそうだなぁ。
右目もうるさそうだし。
あーやだやだ…。
「才蔵、鎌之助、六郎、小介〜。お留守番、よろしくね」
真歩ちゃんが名前を呼ぶと、四人が姿を現して大将と旦那が驚いてる。
いや、普通に出て来るなよ。
「佐助、ちゃんと守れよ」
「帰ったら勝負の続きだからな!」
「怪我しないようにね」
「長、ちゃんと守って下さいね」
お前等、好き勝手言いやがって…そもそも、主の前に堂々と出てくるなよ。
「あの忍隊と、あぁも簡単に仲良く出来てしまう真歩は凄いで御座る」
「どっちが主かわからんのぉ!ワッハハハ!実に愉快じゃ!!」
いや、笑い事じゃないでしょ!
真歩ちゃんは、大将と旦那そっちのけで騒いでるし。
もう少し緊張感を持って欲しい。
「はいはい、お前達帰ったら説教な。真歩ちゃんもそろそろ行くよ」
「みんなは、あたしの見送りに来ただけなのに、説教は駄目だよ」
「いや、それが問題なの。ほら、行くよ」
「うーん…。じゃあ、行ってくるね!」
いや、忍は主の前にそんな普通に出てきゃ駄目なんですー。
って、言ったら"だったら佐助が一番駄目なんじゃないの?"って言われて、なにも言えなくなった。
お、俺様はいいんだよ。
「よし、走ろっか!!」
そして、城門から出て大将達の姿が見えなくなると同時に、真歩ちゃんが急に走り出した。
「ちょ、いきなりどうしたの!?しかもそっちじゃないし」
「えっ…走って体力付けようかなって思って。じゃあ、佐助が前走ってくれる?追い掛けるから」
まーた、無茶苦茶な事を言い出すよ…この子は。
仕方なく真歩ちゃんの手を引いて、前を走る。
もちろんちゃんと速さは、調節してるよ。
「やっぱり佐助は、速いなー」
「当たり前でしょーが。ていうか、まだ周りが暗いから足元には気を付ける様にね」
忍で脚力なかったら話にならないよ。
そして結局、真歩ちゃんが疲れるまでずっと走って移動した。
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