君の視線の先に | ナノ

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あたしの言葉にぽんちょの人がいいから早く話せと言わんばかりに、首筋に痛みが走った。

本当に殺されちゃう。

そもそも、こんな事をしたら犯罪だもん。それを平然とやってる時点で色々おかしい事に気付く。



「ちゃんと話します」



自分の首筋から血が流れてくるのがなんとなくわかる。雨のせいか、余計に生暖かく感じて少し気持ち悪い。



「えっと…どうやら、あたしは未来から来たみたいで。だけど、信じてくれとは言いません。あたしも信じたくないので…」



ここが本当に戦国時代なら、あたしが怪しいのはわかるし。服装も変だと言われる訳だ。

刃物持ってても騒がれないはずだよ、うん。長髪の子も別に刃物を出した事には、反応しなかったし。


・・・あたしがなんでタイムスリップしたのか知らないけど、死ぬ未来しか見えない。

なにも知らないし、お金も使えないだろうし。何より、体が動かないし。一体なんの為のタイムスリップなんだ。

なんの意味があるんだ。



「確かに信じがたいね」

「だから、信じなくてもいいです」



・・・もういいです。

なんか諦めがついた気がする。目が覚めたら体は動かないし、助けてくれるのかと思ったら刃物を突き付けられるし、しかも戦国時代とか言うし。

あたしの頭は、キャパオーバーだ。



「何故、そう思うのだ?」

「何故って…あたしがいた場所では、とっくの昔に戦国時代終わってる。なにより刃物なんか出したら捕まるから」

「ふーん、まぁ怪しいにはかわりないけど」



どうやら彼は、あたしを殺す気満々らしい。さっきと同じで蛇に睨まれた蛙状態だ。これは、殺気だってわかる。

それにしても、不本意でタイムスリップして…目が覚めると体は動かなくて、脅されながらも真実を素直に話したのに殺されるとか…なんて酷い話なんだ。



「・・・殺したいならどうぞ。あたしは、この時代で生きていく術を知らないし、体も動かないから」



もう殺したいなら殺せばいい。

体が動かないあたしには、抵抗なんて出来る訳ないんだし。仮に殺されなくても、野垂れ死ぬのが目に見えてる。



「うぬ、佐助この女子を連れて帰るぞ」

「は?旦那なに言ってんの?」

「某には、この女子が嘘を付いてるようには、見えぬのだ。それに体が動かないのならば、何も出来ぬであろう?」



そういうと、長髪の子があたしの顔に張り付いた髪を退かして、優しく笑った。

この子、あたしより歳下だと思うんだけど…なんだろう。捨て猫を見付けた感じ?いや、この子はそんな感じじゃないのかな。

きっと、あたしに同情でもしたんだろうな。かなり見た目は酷いだろうしね。



「ほら、佐助早く連れて帰るぞ。風邪を引いてしまう」



そして、あたしの意見は聞かない様子。だけど、体が動かないので…なに言っても無駄だと悟った。

ぽんちょの人も諦めたのかゆっくりとあたしを担いだ。まさに米俵の様に。

そして首も上げられないので、ぐったりとしたまま…あたしは、見知らぬ方に連れて行かれました。


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