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そして嬉しそうな顔から一変して、険しい顔で真歩ちゃんの話を聞いている旦那。
だから言ったのに…。
「いい考えじゃないかな?」
「だ、だめで御座るっ…!真歩にそんな事をさせる訳にはいかぬ」
「むっ…幸村も反対するの?幸村なら、あたしの気持ちわかってくれると思ったんだけどなぁ…」
がっくりと肩を落とす真歩ちゃんに旦那がわたわたと慌てる。
ていうか、真歩ちゃん…その言い方は狡いと俺様は思う。だって、なんか…いいよって言いたくなったし。
「自分に出来る事がしたいの。とりあえず、鍛えるのはいいとして…交渉には行かせて」
「う、うっ…」
「…お願い、一人で行くから」
いや、それ大問題だから!
なんで、一人で行く気になってんの!?それもはや、危ない以前の問題だからね!?
そして"駄目かな?"と旦那の手をぎゅっと握る真歩ちゃんに顔を真っ赤にさせる旦那。
うん、真歩ちゃん…それは本気で狡い。ていうか、旦那の扱いに慣れてきてるでしょ。
「う、うぬ…ならば佐助と一緒にと言うのならいいで御座る。一人では、絶対行かせぬ」
「ちょ、えっ、旦那ぁ!?」
「ありがとう。幸村がそう言うなら…仕方ないけど佐助付きでいいよ」
おい、こら。
その言い方だと、俺様の事を完全にお荷物扱いしてるよね!?仕方ないけどって、どういう事!?
いや、まぁ…真歩ちゃんの事だから、俺様に負担掛けたくないから、一人がよかったとか思ってるんだろうけどさ。
「という事で、佐助頼むぞ!」
いやいや、頼むぞ!じゃないからね?てか、大将の許可は?大丈夫なの?
「ワッハハハ!!真歩は、実に肝が据わっておるな!」
ちょ、大将いつから居たの!?いきなり現れた大将に吃驚する俺様をよそに、何故か嬉しそうな真歩ちゃん。
「女は、度胸です。あたしの怪我が治り次第、行きたいんですが…いいですか?信玄様」
「ワッハハハ!こりゃ参ったのぉ!よいよい、真歩に任せる。それと信玄様は、やめてくれんか?」
え、ちょ、任せちゃったし。大将…そこは止めて欲しかったぜ、俺様。
そしてそんな俺様の気も知らず"じゃあお館様で"と笑顔で答えている真歩ちゃんと、嬉しそうな大将。
えぇ…もうなにこれぇ…。
「佐助、真歩を頼むぞ!文は、儂が用意しておく」
「ならば、早く怪我を治さねばならぬな!真歩は、ゆっくり休むのだぞ」
「はい、ありがとうございます。幸村もお館様も、話が分かる人で助かりました」
そう言いながら、チラッと俺様を見る真歩ちゃんは、"佐助と違ってね!"言わんばかりな目だった。
うわぁ…酷い!
俺様は、真歩ちゃんを心配して止めたのに。
てか、なんで俺様が真歩ちゃんを心配しなきゃなんないんだよ。
あぁ…もう訳わかんない。
そしていつの間にか、真歩ちゃんを心配している自分に、疑問を持ち始めた俺様だった。
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