▼ 01 (3/4)
この人、あたしを人間として見てないんじゃないかな。
結局、木陰まで普通に引き引き摺られました。
多分、服とか…物凄い事になってると思う。
｢で、質問に答えてもらうけど。まず、どっから来たの？｣
｢あの、まずここはどこなんですか…｣
木に寄りかかり、視線だけで回りを見れば見た事もないような光景が広がっていた。
木造の家？いや、でもあれは…小屋かな？本当にここはどこなんだろう。
やっぱり、どこかの田舎町なのかな。だけど、それにしては…造りがお粗末だし。古過ぎる気がする。
それによく見たら、この人達の格好も色々とおかしい。あたしの服装を変だと言ってたわりに、この２人の方が変である。
｢は？此処は、甲斐の上田だけど｣
・・・・・・。
甲斐って、聞いた事はあるけど…いや、そんな事はない。ある訳ない。
｢ちょ、ちょっと待って…これ、なんかの撮影？｣
｢なに意味わかんない事言ってるの？｣
それはこっちの台詞だ。
だけど、この人が嘘を付いてる様にも見えない。
だったら、ここはなんなの？
｢ここは、日本ですよね？｣
ちゃんと日本語を話してるし。
正直、こんな田舎にしては度を越えている場所があるなんて、あたしは知らなかったけど。
｢は？にほん？なにそれ…｣
・・・えっ？
まさか、日本を知らないの。どういう事なんだろう。さすがに海外でも日本を知らない人は、少ないだろうし。
それに日本って単語すら知らない様子だし、もう訳がわからない。
｢国の名前です｣
｢此処は、日ノ本だけど。あんた南蛮人なわけ？｣
な、南蛮人？
というか、日ノ本って昔の日本の言い方じゃなかったかな？それに…南蛮人って言うのも、昔の言葉じゃないかな。普通なら外国人とかいうはずだし。
・・・も、もしかして。
｢あの…今は、なに時代ですか？｣
正直、なんでこんな事を聞かなきゃならないのか、意味がわからないけど…平成だって言ってくれるはずだ。
見た目もそうだけど、少し変わった人なのかも知れないし。
｢は？今、戦国時代だけど。なに、あんた頭おかしいの？｣
｢なにやら、不思議な女子だな｣
・・・どうしよう。
現実逃避をしたい。
意味がわからない。
え？ここは、日ノ本で今は戦国時代？なにそれ…本当に意味がわからない。何かの間違いに違いない。
というか、仮にそうだとしても…なんであたしがそんな時代に居るんだ。
よく映画とかであるタイムスリップってやつ？だけど、そのタイムスリップをした覚えもない。
つまり、全く状況がわからない。
｢えっと…状況が壮絶過ぎて頭がおかしくなりそうです｣
｢元からおかしいでしょ｣
・・・っ、酷い。
だけど否定出来ないのは、自分でも今の状況を理解出来てないし、理解したくないからかもしれない。
そもそも、未来から来たってどういう事なの。
｢で、状況が壮絶ってどういう事？｣
｢信じて貰えるかわからないんですが…｣
テンパるあたしをよそに相変わらず、顔色ひとつ変えないこの人は、本当になんなんだろう。
もし、戦国時代なら…この人は侍かなにかなのかな。
prev / next