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とりあえず、未だに目を回している真歩ちゃんに、大将を紹介するとバッと顔を上げた。
え、目が回ってたんじゃないの!?
「儂は、武田信玄じゃ。お主の事は、幸村と佐助からよく聞いておる」
「え、はい…真歩です」
緊張してるのか真歩ちゃんの表情が硬い。
さすがに大将を前にしてるんじゃ、仕方ないか。
「体は、どうじゃ?佐助に斬られたと聞いたが」
はい、確かに斬りましたけど…ちょっと俺様も後悔してるから、その事はあんまり言わないで欲しかったりする。
「あ、大丈夫です。それと、斬られたんじゃなくて…あたしが斬ってもらったんです」
・・・真歩ちゃん。
確かにそうかもしれないけど、俺様が斬ったのは事実だから。わざわざ、そんな言い方しなくていいのに。
「…ほぅ?佐助は悪くないと?」
「はい。あたしが裏切ったとわかったら、斬るしないじゃないですか。そう仕向けたのはあたしなんで…佐助は悪くないですよ」
いつもの柔らかい表情で、はっきりとそう言い切った真歩ちゃんに、胸が痛くなった。
真歩ちゃんが言った事は、確かに合ってる。
だけど…もう少し俺様がちゃんと話をしていれば、真歩ちゃんが嘘を付いている事に気付いて、斬らなくてすんだかもしれないのに。
「ワッハハハ!本当に良き娘じゃな。優しくて可憐と幸村が言っていたが…その通りじゃな」
「えっ?幸村、そんな事言ったの?」
「そ、某は本当の事を言っただけで…真歩は、優しくて可憐な女子で御座る」
顔を真っ赤にしながら旦那が真歩ちゃんの手を握る。
あら〜。またそんな大胆な事しちゃって。
「えっ…あ、ありがとう」
思わず目を見開いて、恥ずかしそうにお礼を言っちゃう真歩ちゃんを見て笑みがこぼれる。
旦那に圧倒され過ぎでしょ。
「それでなんじゃが。真歩よ、右肩を見せてくれぬか?お主の痛みを儂も見ておきたい」
「あ、はい…じゃあ」
くるりと俺達に背を向けて右肩の着流しを少しだけずらす。
それを見て旦那が叫び出しそうになるのを、咄嗟に俺様が止める。
俺様と才蔵と凛しか見た事がないその印は、やはり最初に比べるとだいぶ広がっていた。
「本に忌々しいのぉ…。もう良い…しまってくれ」
大将は、険しい顔をして真歩ちゃんにしまうようにいって、着流しを着直した真歩ちゃんの頭を優しく撫でた。
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