君の視線の先に | ナノ

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そして暫く、他愛ない話している内に段々と才蔵も慣れてきたらしく、普通に会話に参加してくれる様になった。



「えっ、才蔵って薬師なんだ!」

「あぁ、真歩が飲んでる薬も俺が作ったものだ」

「そうだったんだ。ありがとうね」

「いや、大した事はない」



この時代には、病院とかはないんだよね?だから、才蔵が薬師で色々な薬を作っている聞いて、素直に凄いと思った。

というか、病気になったりしたらどうするのかな。

やっぱり、薬師と別に医師がいるのかな?うーん…全然わからないや。



「才蔵の薬は、効くからなー。てか、真歩もよく佐助に斬られて生きてたよな!」

「うん、自分でも吃驚したよ」

「冷静か!!」



だって、あたしは佐助に殺されるつもりだったからね。

だけど、結局…佐助が助けてくれたみたいで、こうして生きてるだけ。

だから、本当なら死んでたはず。


「本当なら…即死で死ぬ予定だったんだけど。失敗しちゃったからね」


「死ぬ事に予定なんてない」


・・・こ、怖い。

なんでそんなに怒ってるんだろう。やっぱり、無駄な事させちゃったからかな。

才蔵や鎌之助もあたしを探してただろうし。



「そう簡単に死のうとするな」

「っ、…は、はい」

「ま、幸村様に手出したりしたら問答無用で始末するけどな」

「だ、出さないよ!幸村も…みんなもあたしの恩人だもん」

「そうか」



な、なるほど…才蔵は怒らせると怖いタイプなんだな。大人しそうな人程、怒ると怖いって言うしね。

そしてそんな事を思っていると、才蔵があたしの頭を撫でた。

あ、あれ?なんかあたし、子供扱いされない?見た目からして、あたしの方が年は上だと思うんだけどなぁ…多分。



「まぁ、勝手に死んだら俺が真歩を殺すけどな!」

「そんな無茶苦茶な」

「あ?だから、許さねぇって事だよ!」



え、えぇ…言ってる事がよくわからないんだけど、あたしに簡単に死ぬなって言ってくれてるんだよね。

それにしても、鎌之助は才蔵と違ってちょっとおバカなのかな?だけど、素直で真っ直ぐな鎌之助の言葉は嬉しかった。



「ふふ、わかったよ」

「てかさ、佐助は手抜いたんだろうな」

「あぁ、無意識にと言った方が正しいだろうがな」

「ん?どういう事?」

「真歩は、馬鹿だから知らなくていいんだよ!」

「し、失礼なっ!馬鹿なのは、鎌之助でしょ!」

「大丈夫だ、俺からしたら二人共馬鹿だ」



え、ちょっと…普通に才蔵が酷い。

そんな優しい顔でサラッと言わないでよ。美少年なのに、毒舌とか吃驚だよ。



「そういえば、忍の人は顔が整ってないといけないの?」

「なにがだ?」

「だって、佐助も鎌之助も才蔵も…みんな、顔整ってるから。しかも中性的だし」

「はぁ?なに言ってんだよ」

「鎌之助は可愛い顔してるし、才蔵は綺麗だから」



あたしの言葉に鎌之助の顔が、みるみる怒りの色に染まっていく。

あっ…もしかして、可愛いは駄目だったのかな。

でも本当に鎌之助は髪の毛が長いのも相俟って、黙ってれば女の子みたいだし。



「可愛いって言うんじゃねぇ!!ぶった斬るぞ!ちんくしゃ!!」

ち、ちんくしゃってなに!?ちょっと笑っちゃったよ。


「羨ましいくらいなのに。それに、普通に格好とも思うよ?」


どっちかと言うと、顔は可愛いってだけだからね。口調とか男らしいし。ハッキリ物を言えるし。


「なっ…!そ、そうか…?」


あれ、満更でもないのかな。
ちょっと嬉しそう。



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