君の視線の先に | ナノ

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そしてケタケタと笑いながら、あたしの頭を撫でる由利さんの手を退かすと、髪の毛が見事に爆発していた。

それを見て更に由利さんが笑い出して、ムッとする。



「あーおもしれぇ〜。あんた最高だわ!」

「ゆ、由利さんは最低です。後、あんたって言わないで下さい!」

「へいへい、真歩だろ。つーか、由利さんじゃなくて鎌之助な?」



な、なんだろう。

佐助もそうなんだけど、あたしの思ってた忍となんか違う。というか、なんか…思ったより子供っぽいというか。

変に遠慮されるよりは、いいけど…ちょっと驚いた。

それにさっきから全く反応しない、霧隠さんも気になるし。


「えっと、霧隠さんは…怒ってますか?」


ずっと黙ってる才蔵さんの方を向けば、無表情でこちらを見ていた。


「いや…俺は…」

「あぁ、才蔵はなぁ〜」

「なんですか?」


ゆっくり、顔を上げた霧隠さんがあたしを見つめると、スッと視線を反らした。

あ、あれ?やっぱり怒ってるのかな。


「こいつは無口っつーか、」

「…別に怒って等いない」

「そ、そうですか」


どうやら、怒ってはいないみたいだ。だけど、余り話したくない様子だ。

ちょっと残念だけど、仲良くは出来ないのかな。名前も教えてもらった訳だし、少しでも仲良く出来たらいいな…と思ったんだけど。

やっぱり、忍と監視対象じゃ駄目かな。


「あの、やっぱり…あたしと仲良くとか出来ませんか?」

「は?」

「・・・?」


そしてあたしの言葉にポカンと間抜けに口を開けている鎌之助と、小さく頭を傾げている霧隠さんにあたしも頭を傾げた。

えっ…別に、変な事は言ってないよね?



「あ、あの…」

「ぶふぅっ、おま、はっ?忍と仲良くって、やっぱりお前って変な奴だな!」」

「えっ…だって、」

「そもそも、仲良くとは?」



え、えーと…何故か、笑い転げている鎌之助と本当に不思議そうな顔をしている霧隠さんに、ちょっと驚いている。

そんなに変な事だったのかな。佐助とも普通に話したりしてるから…大丈夫だと思ったんだけど、駄目なのかな。



「一緒にお話ししたりとか…駄目ですかね?」

「俺等は、忍なんだが…」

「やっぱり、忍は話したりしちゃ駄目なんですか?」

「あ?んな訳ねぇだろ。ただ、忍は道具だからな、普通はそんな事に使わねぇって事」

「・・・道具、ですか」



・・・なるほど。
正直、忍の立場が今までよくわからなかったけど…そっか。

従ってる主がいるんだもんね。つまり、その人の為に動いてるって事で…王様と家来みたいな関係って事なのかな。

そう考えると、確かに王様が家来と仲良く話をしてるのは変な気がする。

だけど、それはあたしには関係ないと思うんだ。



「だけど、あたしはあなた達の主じゃないから…えーと、仲良くして欲しいです」

「本当に変な奴だなお前。忍と仲良くしたいって…まぁ、いいけどよ」

「あ、あの霧隠さんは?」


「別に構わないが。それと才蔵でいい」



どうやら、あたしと仲良くしてくれるみたいだ。

無理強いをしたつもりは、ないんだけど…ちょっと強引だったかな。だけど、この時代の事を何も知らないから…出来る事なら色んな人の話が聞きたい。

そんな事を考えていると鎌之助がグイッと身を乗り出して、あたしの顎を掴んだ。



「忍相手に本当に変な奴だよな。まぁ、嫌いじゃねぇけど」

「あたしからしたら…忍だからとか関係ないし。そもそも、服装くらいでしか判断出来ないから」

「変わっているな」

「鎌之助もさ、才蔵も忍には違いないんだろうけど…忍だからとかで括りたくない、です」

「そうか」



・・・忍だって人間だし。
鎌之助や才蔵が道具だなんて、あたしは認めたくない。確かに、主の為に生きてるかもしれないけど。

それでもあたしの前では、忍として自分を殺すんじゃなくて…普通にして貰いたい。



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