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そして暫くお互いに黙っていると、急に真歩ちゃんが右肩を力強くぎゅうっと掴み出して、すぐに手を離そうと手を伸ばす。
だけど、大丈夫だからと言わんばかりに頭を振る真歩ちゃんに少しだけ苛ついた。
そして、真歩ちゃん制止を無視して近寄り着流しをずらして、真歩ちゃんの手を退ける。
「・・・っ」
何を条件に印が暴走するのかわからないけど、最近は真歩ちゃんが熱で寝込んでいたせいか、印が暴走する事はなかった。
「すぐ押さえ込むから」
カタカタと体を震わせながら、必死に痛みに耐えている真歩ちゃんをゆっくり抱き寄せる。
「何回も辛いよね。だから、その痛みの分だけ噛んでいいよ。少しでもいいから、真歩ちゃんの痛みを俺にも分けて?」
俺の言葉にブンブンと頭を振りながら、必死に俺から離れようとしている真歩ちゃんを無視して素早く印を結ぶ。
そして左手でゆっくり真歩ちゃんの頭を撫でてやる。
「一人で抱え込まなくていいよ。俺が絶対に呪囚を解くから」
トンっと右手を右肩に置くと肩に痛みが走る。
これが真歩ちゃんの痛みなんて思わない。これ以上の痛みを真歩ちゃんは、今耐えてるから。
ギリギリと俺の肩を噛む真歩ちゃんの頭を撫でてやる。
今の俺には、こんな事しかしてやれない。
拷問に慣れてる忍でさえ、死にたくなる程の痛みなんだから…逃げ出したくなるのは、当たり前だ。
むしろ、一度でも耐えているだけでも凄いんだから。それが何度も襲って来るんだから、死にたくもなる。
「辛いかも知れないけど、俺は真歩ちゃんに死んでほしくないな」
俺の言葉にピクッと真歩ちゃんの体が反応したかと思うと、印の暴走が一気に弱まる。
「もう少しだから」
徐々に落ち着いて来たのか肩から口を離して、俺の胸の中でカタカタと震えている真歩ちゃん。
暫くして完全に印を押さえ込み右肩から手を離す。
「よく頑張ったね」
優しく真歩ちゃんの頭を撫でてやれば、顔を上げた真歩ちゃんの瞳には涙が溜まっていた。
また泣くのを我慢してたんだね。
「我慢しなくていいって言ったでしょーが。泣きたいなら泣いていいし。辛いなら辛いって言っていいんだよ」
「っ、なんで…そんな優しい事言うの。我慢するのが当たり前だった、はずなのに…」
「俺がそう思ったから…それだけじゃ駄目?だから、我慢しなくていいよ。それに痛いなら、その分を俺にって言ったでしょ?」
そしてずっと堪えていたものが溢れる様に、真歩ちゃんは俺の胸の中で泣いた。
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