君の視線の先に | ナノ

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旦那が出て行った後、ゆっくりと薬が乗ったお盆を真歩ちゃんの側に置く。



「幸村が言ってるお館様って、武将だよね?誰なの?」



ちょ、さっきの話を聞こうと思ったら、まさかの先に質問されてしまった。

いや、まぁ…別に答えるけどさ。上田に来るみたいだから、隠す意味ないし。



「んー武田信玄って言うんだけど、知ってる?」

「え?あの武田信玄?」

「俺様には、どの武田信玄かはわからないけど。多分、その武田信玄じゃない?」

「・・・あれ?真田幸村って武田信玄に仕えてたかな」

「ん?」

「あたし、歴史の勉強…ちゃんとしてなかったのかな。どうしよう、全然わからないや」



なにやら、うーんと唸りながら頭を抱える真歩ちゃんに頭を傾げる。

どうやら、大将の事は知っているみたいだけど…記憶が曖昧らしい。



「で、俺様も聞きたい事あるんだけど」

「なに?」

「旦那は、俺様の事なんて言ってた訳?節操がないとか酷いでしょーが」



さすがに、節操がないは…いくらなんでも酷いぜ旦那。

確かに、女の子はみんな好きだけどさ…真歩ちゃんに言わなくてもいいじゃん。



「んー…佐助は、破廉恥極まりないとか、すぐ女子に手を出すとか…節操がないとか…女子ならみんな好きとか…?」



ちょっ、旦那ぁぁ〜!?

なんでそんな事まで言ってんのよ。だけど否定出来ない自分が悔しい。



「だから、真歩も気を付けるで御座るーって言われたの」



悲しい、俺様泣いちゃう。

てか、なんでそんな事旦那が知ってるんだよ〜。節操がないとかさぁ…。



「はぁ…で、真歩ちゃんはそれを聞いてどう思った訳?」

「えっ…別に。その人の自由だし、あたしが口出す事じゃないから…」

「え、」

「だけど、いくらお互い合意の元だとしても…あたしは、そういうの苦手かな」



ちょっと嬉しいと思ったのに最後の言葉に肩を落とす。

いや、まぁ…そりゃあそうだよね。

遊郭の女の子ならまだしも、真歩ちゃんは普通の女の子だし。そう思うのは、当たり前だ。



「でも、忍の仕事が大変なのも聞いたから…。それで気が紛れるならいいじゃないかな…誰にだって、逃げ道?っていうのか…気持ちを吐き出す事は必要だし」



・・・気を紛らわすねぇ?

だいたい、俺様はそんな理由で女を抱いたりしないけどね。でも抱きたいから抱くなんて言ったら、怒られそうだからやめとこ。

まぁ、こればっかりは男の性だよね〜。

確かに、色々と気は紛れるのかも知れないけどね。

てか、真歩ちゃんって本当に不思議な子。

優しいって言うのか…よくなんかわからないけど、その人の生き方を否定しないって言うか。

だって普通の女の子なら俺様の事聞いたら、ドン引きするでしょ、普通。

なのに、"いいんじゃないかな…"って。



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