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ゆっくりと真歩ちゃんに近付いて抱き起こす。
俺様がやったんだ、浅いはずがない。すぐに止血をして手当てをするが、傷が深過ぎる。
そんなの殺すつもりで斬ったんだから当たり前だ。
「っ、なに、してるの…?」
苦しそうに喋る真歩ちゃんを無視しながら手当てを続ける。このまま運んでも城に着いた頃には、手遅れだ。
「ねぇ…なんでそんな無茶すんの?」
いくら俺達を巻き込みたくないからって、ここまでして俺達を守る理由がない。
「っ、操れて…幸村や佐助を殺すくらいなら…殺された方がいい」
「なんで、そんなに」
「幸村と佐助は、あたしを助けてくれたから…だからいいの」
そして、手当てを邪魔する様に無理矢理体を動かそうとする真歩ちゃんを力ずくで止める。
なんでか、わからないけど苛ついた。
「真歩ちゃん…さ。
旦那や俺様の気持ちは、無視なんだね」
その言葉に真歩ちゃんが、一瞬目を見開くがすぐに伏せた。
「迷惑を掛けたくないってのもわかるけどさ。もう少し頼ってよ」
自分でもなにを言ってるかわからなかった。
俺様は、真歩ちゃんに頼って欲しかったのか?
「・・・っ」
そして苦しそうに言葉に詰まる真歩ちゃんを抱き抱えて、すぐに城に向かう。
手当てが間に合わなきゃ真歩ちゃんが死ぬ。
なんでかわからないけど死んでほしくないと思った。
「だから、殺されようとしないで。まぁ、殺し掛けた俺様が言うのもおかしいんだけど」
抱き抱えられてる真歩ちゃんを見れば苦痛に顔を歪ませながらも必死に笑顔を作っていた。
痛みもなにもかも我慢してるって言うのか。
これが条件であった我慢強さってやつなのか。
そして、城に着くと旦那が真っ青な顔で駆け寄ってくるが今は真歩ちゃんの手当てが先だ。
すぐに才蔵を呼び戻し薬を出してもらい、手当てを急いだ。
暫くしてなんとか、真歩ちゃんは一命を取り留めた。
だけど、血を流し過ぎたせいで今は寝ている。
すぐに旦那が来て一連の出来事を話せば、殴られるかと思いきや泣き出す旦那に困惑する。
「やはり、某は真歩を救いたい…。二度とこんな辛い思いをさせたくないっ…」
俺様に斬られた後に言った"ありがとう"という言葉と、あの笑顔が思い浮かぶ。
あの時、どんな気持ちで俺様に斬られたのかを考えると胸痛くなった。
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