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鎌之助に事情を聞けば、厠に行くから付いてくるなと言われた二人は仕方なく部屋で待っていたが、いつまで経っても帰って来ない真歩ちゃんを不思議に思い厠に行ったが姿がなかったという。
「ふーん、まぁ見付け次第俺様に報告して」
一応、なんで逃げ出したか理由くらいは聞かなきゃね。
独特な真歩ちゃんの不思議な香りを頼りに探しまわると、案外早く見付ける事が出来た。
遅くはないけど、特に速くもない速度で走っている。
「みーつけた」
スッと真歩ちゃんが走って来るであろう場所に降りれば真歩ちゃんは、ピタッと走るのをやめる。
「さすが忍…速いね」
息を切らしながら俺様を捉える真歩ちゃんは、なんだか不思議な雰囲気だった。
「で?なんのつもり?一応、理由は聞くけど」
「そのままの意味だけど?」
その言葉に武器を手に取り攻撃をする。しかしギリギリで避けられる。
今の避けちゃう辺り…やっぱり、普通の子じゃないのかもしれないねぇ。
だけどさっきの言葉で真歩ちゃんの裏切りが明確になった。
「・・・織田に力を貸すのも悪くないかなって思っただけ」
「へぇー…恩を仇で返すってまさにこの事だね」
武器を握る手に力が入る。
本当なら殺すつもりなんてなかったのに、本当に残念だよ。
躊躇なんてしなかった。
旦那や俺様を裏切った真歩ちゃんが悪いんだから。
「俺様せっかく真歩ちゃんの事、信用しようかと思ったのになぁ。だけど、それも無駄だったみたいだわ」
その言葉に一瞬真歩ちゃんの動きが鈍るのを俺は、見逃さなかった。
反応が遅れた真歩ちゃんは、俺様の大型手裏剣で盛大に斬られる。
ゆっくり真歩ちゃんの体が崩れ落ちるのを見つめながら、大型手裏剣の血を振り払った。
「・・・ありがとう」
背後から真歩ちゃんの有り得ない言葉が聞こえて振り向けば、顔だけをあげて笑顔でこちらを向いていた。
「佐助なら…躊躇しないっ、と思った。だか、らっ…よかった…」
・・・意味がわからない。
なんで自分を斬った俺様に笑顔を向けて礼を言ったあげく、よかったなんて、言葉・・・
「っ!!まさか、真歩ちゃん・・・」
「ごめんね。話…聞いちゃった。結局、佐助に嫌な役回りさせてごめんね。幸村には、言わっ…ない、で…ね」
段々と真歩ちゃんの言葉の意味、行動の意味がわかって来て…俺は、目の前が真っ暗になった。
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