君の視線の先に | ナノ

 08 (3/4)


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あたしに見張りがいる事は、なんとなくここにお世話になってからすぐに気付いた。

元々、視線とかに敏感だったし。

厠に行きたいからとりあえず付いて来られるのは嫌だから、一言何処にいるかわからない見張りの人に話し掛ける。



「厠に行くので付いて来ないで下さい」



返事が返ってくるわけでもなく、なんだか独り言のようで恥ずかしいがそのまま部屋を出た。

だけど、あたしの気持ちをわかってくれたのか、視線を感じなくなり安心して厠を目指すが…普通に迷った。

仕方なく、ふらふらと廊下を歩いていると幸村と佐助ともう1人誰かの声が聞こえて来て…思わず、息を殺すように忍び足で部屋に近付いた。

正直、佐助にすぐに気付かれると思ったのに気付いていないらしく、普通に会話をしている。

大事な話でもしているのだろうか。

そして耳を傾けて3人の会話を聞いたあたしは、愕然とした。

自分の正体と召喚された理由。

そして無理矢理操れるということ。


・・・やっぱり、ここには居られない。


そう思ったあたしは、厠に行くのも忘れて城を飛び出した。

だから嫌だって言ったんだ。迷惑掛けるからって、殺して欲しいって。


結局、あたしは幸村達のお荷物にしかならない。いつ爆発するかわからない、爆弾を抱えてるようなものだ。


死を望んでいたって言うなら今、ここでもそうだ。だけど幸村達は、きっとあたしを殺さない。何度頼んでも駄目だったんだから。

だったら力ずくで殺してもらうしかない。きっとあたしが居なくなったと知ったら、佐助を始め忍のみんなが探しに来ると思う。

あたしは、そんなに足も早くないし…すぐに見付かるはずだ。

もちろん、逃げ切れるならそれはそれでいいんだけどね。下手な侍にでも挑んで死ぬことも出来るから。

あたしには、自分で死ぬ勇気がないから、結局誰かに殺してもらわなきゃいけないんだ。


何も覚えていない。本当の自分さえもわからない。だけど、本当にあたしは死にたかったんだろうな。

だから、この時代に召喚された。

だけど、こんな過去に来てまで人に迷惑を掛けたくない。

・・・そうだよ。

条件にあったようにあたしは、我慢強いんだよ。だから大丈夫、あたしなら出来る。



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