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だけどそれは、こっちも同じ。
真歩ちゃんを取られる訳にはいかない。運悪く死んだと思ってくれれば、ありがたいんだけどなぁ。
まぁ、意地でも探し出しそうだけど。
「で、旦那どうすんの?」
きっと召喚された人間が真歩ちゃんだって、すぐにわかるだろうし。
下手しなくても確実に奪いに来る。そしたら甲斐は、ただじゃ済まない。
「…某は、真歩を救いたいと言ったのだ。それは、今も変わらぬ。俺は、真歩を守りたい…」
まぁ、そうだと思ったけどさ。そう簡単には、いかない。
相手は、第六天魔王織田信長だ。
「だけど一つおかしな点があるんだよ。召喚された人間は、神の如く強大な力を持ってるらしいぜ?」
確かにそんな力があったら、律に負け訳がない。しかもこれと言って身体能力が少しいいだけで、物凄く強いって訳でもない。
「まさかの手違いとか?」
召喚の場所を失敗するくらいだし、ありえない話でもない。ていうか、そうであってほしい。
「んーありえない話じゃないけど。まぁ、力がないならそこまで脅威じゃないんじゃない?とりあえず、引き続き俺は安土で情報を集めてくるよ」
「あぁ、気を付けろよ」
「了解」
そしてスッと姿を消す海野。
だけど、旦那は黙ったままだ。
うーん、どうしたもんかねぇ…。
「もし、真歩ちゃんの力がまだ目覚めてないだけだったら、」
「それでもっ…俺は、真歩を守りたいで御座る…」
泣き出しそうな顔で頭を下げる旦那に近付き、頭をポンッと撫でてやる。
「俺様も旦那の気持ちを尊重してやりたいけどさ。こればっかりは、無理かな」
そんな強大な力を持ってるとすれば、どんな状況だろうと俺達の脅威になる。
「だが、まだ真歩が力を持ってると決まった訳ではないではないか!」
うん、まぁ…そうなんだけどね。
俺様の勘が正しければ、そんな強大な力を持ってるいるようには感じられなかった。
それに目覚めてないにしても、そんな気配がないのも事実。
「そんなに落ち込むなよ、旦那。守りたいんでしょーが」
・・・大丈夫。
どうにもならなくなったら、俺様が真歩ちゃんを殺すから。
今は、旦那の気が済むようにさせてやればいい。
「佐助っ…!!」
旦那の目の前だってのに、急に天井から降りてきたのは真歩ちゃんの見張りを頼んでおいた鎌之助だった。
「どうした?」
「真歩が逃げ出した!今、才蔵が探してる!!」
その言葉に"裏切り"と言う文字が頭をよぎる。
「わかった、俺様も行く」
そんなやりとりを聞いていた旦那が、心配そうな顔で俺様を見つめた。
そしてそんな旦那に"大丈夫だから"といつもの笑顔を向けて部屋を出た。
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