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そして、未だに頭を下げたままの真歩ちゃんの手は震えていた。
真歩ちゃんの出方次第では、俺様が殺そうと思ってたけど…まさか自ら殺してくれって言うとは思わなかった。
「な、なにをっ…そんな事、出来る訳ないで御座ろう!!」
やっと状況が読めたのか、バッと真歩ちゃんに駆け寄り頭を上げさせる旦那。
そんな旦那に真歩ちゃんは、すまなそうに笑うと俺様の方を向いた。
「うん…。幸村は、そう言うと思ってた」
「な、ならばっ…!」
「ううん。嫌な役回りさせて悪いけど…佐助なら出来るよね?頼んでいいかな?」
そう言いながら、すまなそうに俺様を見つめた。
確かに、旦那は無抵抗な人間を殺せる程心を鬼に出来ない。それを代わりにするのが俺様。
それを知ってか知らずか真歩ちゃんは、俺様に頼んだ。
「な、ならぬ!佐助、殺すなっ!!」
そんな真歩ちゃんを必死に止める旦那を無視して、"お願いします"と頭を下げる真歩ちゃん。
「幸村…あなたは、偉い武将さんでしょ?たった一つの命より世界を見ないと駄目だよ」
その言葉にバッと真歩ちゃんを見れば怒っているのか険しい顔をしていた。
「実際、あたし何も出来ないけど…その言い伝えが本当だったらどうするの?困るのは、幸村達だよ?」
本当に真歩ちゃんって、自分の気持ち押し殺して我慢するのが癖なんだね。
微かに震えている声。
泣かないようにと強く握っている拳。
ずっと能天気なお馬鹿さんだと思ってたけど、旦那よりも随分と大人な考えを持ってた事に驚いた。
というか、
「まだ話終わってないんだよねぇ。もちろん、真歩ちゃんを殺すのも一つの手なんだけど」
「っ、佐助!!」
旦那が怒るのは、わかるけど今は黙って聞いててくれよ。俺様だって、旦那の命令に逆らいたくないんだから。
「呪囚の広がりきるには、時間が掛かるんだよね。それに俺様が広がり始めたら封印の印で封じる事も出来るから、そんなに早く広がりきらない」
「だから?時間が経てば同じ事じゃないの?」
「そうでもないよ。実は、呪囚の印は織田を討てば解けるんだよね。どうする?それでも俺様に殺してって頼む?」
真歩ちゃんが織田を討つって、言うなら俺様だって殺すつもりもない。
まぁ、呪囚が広がっちゃえば殺すしかないけど。
「・・・佐助って意地悪だよね。だけど、やっぱり殺して」
「な、なぜで御座るっ…!」
「あたしは、未来から来て…戦い方も何も知らないんだよ。そんなあたしが織田に勝てる訳ないでしょ?」
・・・・・。
"だから、殺して下さい"と申し訳なさそうに笑うと真歩ちゃんは、再び頭を下げた。
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