君の視線の先に | ナノ

 06 (2/4)

そして旦那の部屋の前に着いて、一言声を掛けてから襖を開けた。

真歩ちゃんは、ゆっくりと俺様に続いて部屋に入って来て、俺様と旦那の近くに座った。



「うむ…佐助から聞いたのか?」

「え?」

「まだ詳しくは、話してないよ。俺から話ていいの?」



俺様の問いに辛そうにゆっくりと頷く旦那。

まぁ、気に掛けてる異性にあんな事は説明したくないか。いや、旦那の性格的に相手が誰であっても嫌がりそうかな。



「じゃあ俺様から話すから、ちゃんと聞いててね」

「うん」



ゆっくり頷く真歩ちゃんは、どこか悲しそうな顔で笑った。

聞きたくないなら、素直に聞きたくないって言えばいいのに。まぁ、結局は話さなきゃならない事なんだけどさ。



「まずは、真歩ちゃんが未来から来たってのは嘘じゃなかったってわかった」

「そうなんだ」

「それで、真歩ちゃんをこの時代に呼んだのは織田信長」



その言葉にピクッと真歩ちゃんの体が反応する。

やっぱり、俺様や旦那を知ってたし、織田も知ってるみたいだね。



「簡単に言うと、各地から名のある術者を集めて召喚儀式をして、真歩ちゃんをこの時代に召喚した」

「・・・・・」

「それで、その時に呪縛と呪囚の印も一緒に行ったらしいが、召喚が失敗して真歩ちゃんは、あそこに居た訳。召喚自体は成功したけど、出現場所に失敗したって事ね」



今、真歩ちゃんが此処にいるのがその証拠。

本当にただ、召喚場所を失敗しただけであって…真歩ちゃんを召喚は成功してるのは、あっちも知ってるって事。

そして一番重要な事。



「真歩が召喚された理由だけど、"異世界の者を従わせた者は、世界を手にする"って言われているんだってさ」



簡単に言えば真歩ちゃんを召喚して、従わせたら世界を手に入れられるって事。



「呪囚が広がっちゃえば、真歩ちゃんの意思関係なしに、織田が操れるからね。そしたら天下どころじゃないと思う」



天下を統べていない今でさえも破滅を呼び、魔王と呼ばれてくらいなんだし。

むしろ世界が滅びかねない。



「そっか…なんか凄いね。あたしなんかで、世界を手に入れられる訳ないのに」


そう自嘲気味に笑う真歩ちゃんに旦那が目を伏せる。



「うん、そっか。それじゃあ…殺していいよ。いや、殺して下さい…かな?」



悲しそうな顔で笑う真歩ちゃんは、今にも泣きそうで強く拳を握っている。



「なっ…」

「あたしが死ぬだけで済むならそれが一番いいと思うの。元からあたしは、この時代の人間じゃないし」

「・・・・・」

「また迷惑を掛けちゃうけど、あたしには天下とかわからないし。あたしが居なければ織田信長は、天下取れないんでしょ?だから、あたしを殺して下さい」



そう言って、頭を下げる真歩ちゃんに俺も旦那も言葉を失った。



prev / next