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真歩ちゃんが此処に来てから二日が経った。
もちろん、まだ信用は出来ないから監視は付けたままだけど。
だけど別に変わった様子もないし、むしろ話せば話すほど無害な気がしてしょうがない。
だって真歩ちゃん、色々とお馬鹿なんだもん。
「よっと。真歩ちゃんは、こんなところで何してるのかなぁー?」
ビクッと肩を上げてゆっくりと振り向く真歩ちゃんは、俺様の目を見ずにおろおろと視線を泳がせている。
いや、さすがに声も掛けたくなるからね。だって、ずっと廊下のまん中でうろうろしてるんだもん。
「…えっ、なんでもない」
「どーせ、真歩ちゃんの事だからまた部屋に戻れなくなったんでしょ?」
「ち、違う!あたしは、ちゃんと部屋に向かってて…だけど部屋がなくて、えっと…だから迷ってなんてないよ!」
ほら、お馬鹿だ。
恥ずかしそうに顔を真っ赤にさせながら、必死に意味がわからない事を言ってる真歩ちゃんの腕を掴む。
「はいはい、こっちだよ。だから、女中を連れて歩くように言ったでしょーが」
「あたし、そういう苦手だから。一人で出来る事やらせたくないし」
いや、でも部屋に戻れなくなってるよね?出来てないじゃん。まぁ、その気持ちは凄いと思うけどね。
「それにしても、方向音痴にも程があるよね。俺様、吃驚だよ」
「うっ…ここ似た廊下ばっかりなんだもん」
むぅ…と不満気な顔をしつつも、素直に俺様に付いていてくる辺り可愛いよねぇ。
「あ、そういえば…呪囚の事でわかった事があるんだよね。旦那も話したいって言ってたし。どうする?今から行く?」
「えっ、うん…わかった。あたし、特にやることないから」
そして、振り向けばいつもの笑顔で"行こっか"と言う真歩ちゃん。
ここ、二日でわかった事があるた。
真歩ちゃんは、無理に笑う癖がある。ていうか、なんでも笑って済まそうとする。
まぁ、俺様や旦那に迷惑を掛けたくないって言ってたから、そのせいかなぁとか思ったりもするけど。
「右肩、痛くなったりしない?」
「うん、大丈夫だよ」
俺様の問いに少し驚きながら、真歩ちゃんが右肩を擦った。
俺様が監視してるから痛くなったりしたら、すぐわかるんだけど…まぁ、一応ね。
「ならいいけど」
「うん、大丈夫」
そしてそれ以上、お互いに口を開く事はなく、旦那が待つ部屋へと向かった。
これから真歩ちゃんに話す事は、きっと真歩ちゃんを苦しめる事になる。
呪囚の意味と未来から来た意味と理由。
海野と小介が安土から帰って来て報告を受けた時…さすがの俺様も驚いた。
でも真歩ちゃんの出方次第では、俺様は真歩ちゃんを始末しなきゃならない。
そんな事を考えながら、チラッ後ろを振り向いて真歩ちゃんを見れば、頭に?を浮かべて俺様を見ていた。
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