君の視線の先に | ナノ

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ていうか、よく見れば可愛い顔してる。

さっきまで泥まみれだったとは、思えない。


「そ、そうで御座るか?困っている女子を放っておくなど出来る訳ないであろう」

「幸村様って優しいんだね。
助けてくれて、ありがとうございました」


それで…と俺様に視線を向ける。


「あ、俺様は猿飛佐助」

「猿飛…佐助、ですか」


え、なにこの子。俺様の事も知ってる感じ?やっぱり、に殺した方がいいんじゃないかな。


「なに?」

「い、いえ…すいません。佐助様って呼びます」


いや、別に謝られる理由がわからないけど…何故か、必死に謝る女に笑いそうになる。

本当に変なやつ。


「あ、あの真歩殿!某に様は付けないで下され」


そして、急に何を言い出すんですか、あんたは!俺様ならまだわかるけど、旦那はダメに決まってるでしょーが。


「なんでですか?」

「距離を感じるではないか。後、口調も畏まらなくていい。普通に接して欲しい」

「でも幸村様は、偉い人ですから。それに幸村様だって、あたしに敬称付けてるじゃないですか」


まぁ…丁寧な口調ではあるけど、結構砕いた話し方してるよね。まぁ、旦那がいいなら別に構わないけどさ。

旦那は、誰にでもそうだし。


「ならば某も真歩と呼ぶ!ならば良かろう?」


旦那の言葉にうーん…と唸り出す女。

まぁ、旦那は言い出したら利かないからなぁ。頑固だしね。



「呼んでやれば?」

「じゃあ幸村で…先に言っておきますけど、あたし…そんなに口は良くないんで」



仕方なくと言った感じで女がそう言う。

まぁ、俺様は別に口が悪いとは思わなかったけど、本人が言うんだから今までは頑張って畏まってたんだろうね。



「で、あんたはなんで体が動かないの?」

「…え?わからない、です。起きたらあそこに倒れてて、体が動かなくて…どうしようって思ってたら、二人が通り掛かった感じです」



なんて言うか、適当な説明だよね。いや、まぁ…嘘を付いてる様には、見えないんだけどさ。

ていうか、敬語だし。



「なにか覚えてないの?」

「記憶が曖昧でわからないんです。気付いたらあそこに倒れていたので」

「うぬ…、痛みはないのか?」

「それは、全然平気…です」

「そう畏まらんで下され!」



あ、やっと旦那が気付いた。

それは別にいいとして、体が動かないかぁ…うーん、もしかしたら毒とか?

だけど、それなら痺れたりするはずだし、その様子もない。



「うむ、それにしても…体が動かぬのは大変だろう」

「物凄く、不便…だよ」

「うむ!そっちの方がいいでござる!」



まあ、だろうね。

動けない方が俺様からしたら凄く有り難いけど。下手に動き回られるより楽だし。

そして、"真歩も疲れているだろうから"と旦那が言うので暫くして部屋を出た。

うーん、結局なんの情報も手に入らなかったなぁ。

まぁ、海野に出生とかを調べる様に頼んだから大丈夫だろうけどね。



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