アズラエルが去った後、ふぅ…と溜め息を吐きながらゆっくりとバジルール少佐に向き直る。
「何か聞きたい事がありそうな顔ですね」
「君も生体CPUなんだな」
「えぇ。成功体ではNo.01ですよ。試験体No.は覚えてないですけど」
「・・・他の三名も生体CPUとあったが、彼女…エルナとは知り合いなんだな」
「あぁ、あのデータだと過去は抹消されてますしね。そうですよ、彼等は孤児院から連れて来られたんで」
やっぱり、オルガ達のデータは確認したのか。まぁ、その中に俺のデータは無いので、俺が生体CPUとは思わなかったみたいだけど。
それと、アズラエルから事前に色々と指示されてるだろうし。俺に聞く事なんて、殆どないんじゃないのか。
まぁ、これから嫌って程、俺等が苦しむ姿を見るだろうし、色々知っといて貰った方が楽だけど。
「・・・何故、エルナには知らされていないんだ? 資料には、エルナに投薬及び生体CPUについては厳密とあった」
「エルナが後から来たからです。それとアズラエルは、知らないだろうけど、エルナは投薬について気付いてますよ」
「・・・そうか。それでもここにいるのは、彼等の為か」
「バジルール少佐は、俺等をどう思いましたか。可哀想なモルモット? いや、使い捨ての駒ですかね」
「そう言われてきたのか」
「まぁ、事実なんですけどね。ただ、彼等は俺とは違うんで。そこだけは、忘れないで下さい」
俺は、アズラエルに試験体として引き取られただけの死んでも誰も困らない駒だった。
それがたまたま成功した結果、今もこうして生きてるだけだ。ただただ、使える駒だから生かされてるだけ。
そもそも、俺には帰る場所もなければ…待っている人もいない。だから、別にどんな扱いをされても構わない。実際、俺はここでなきゃ生きてけないし。
だけど、オルガ達は違う。幸せに過ごしてたはずなのに、こちら側に無理矢理連れて来られた被害者だからね。
「私からすれば、君も同じだ。どんな施しを受けていようが、人間だ」
「まぁ、俺の事はアズラエルの駒として扱ってくれて構いませんから」
「・・・なるほど。エルナが気に掛けていた通りだな、君は」
「なにがです?」
「自分を犠牲にして、あたし達を守ってくれる優しい人だと。だから、全てを一人で抱え込むと」
「・・・・・」
「もちろん、投薬については自分に秘密な事を知っていたみたいだし、投薬については触れなかったが…エルナは、君の事も他の三名と同じ様に心配していたぞ。君は、もう少し自分を大切にした方がいい」
まさかのバジルール少佐の言葉に固まっていると、困った様に笑い"時間を取らせてすまなかったな。ゆっくり休んでくれ。"とバジルール少佐は、艦長席に向かって行った。
あぁ・・・そうだったな。
エルナは、そういう子だった。オルガ達だけじゃなく…こんな俺なんかさえも救いたい…助けたいと言ってくれたくらいだもんな。
きっと、投薬の事を伏せながらも俺達の事を少しでも知って貰おうと…バジルール少佐に話をしたんだろうな。
はははっ、先手を打たれたなぁ。
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