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あの後、あたしはシャニの部屋に戻らずに自分の部屋に戻りパソコンを起動させていた。

アズラエルさんがなにかあれば使ってくれて構わないとあたし専用に置いてくれた物だ。パスカードを通してこの施設のデータファイルを開く。


"γ−グリフェプタン投与実験記録"

投与という単語にこれだとそこをクリックすれば見慣れた3人とティキの写真が画面に現れる。

そして一人一人についての記録に目を通したあたしは、絶句した。

投与実験なんて書いてある時点で良くない事なのはわかっていたけど…なんでこんな事をシャニ達がされてるの?

4人の過去は抹消され、データにあるのは投与を始めてからの記録データのみ。

そしてなによりもこのγ−グリフェプタンという薬は、身体に負担が掛かり最終的に廃人になると記載されていた。そんな物をシャニ達は、ここに来てから投与されていたと考えると涙が出てくる。


投与直後は、慣れるまで副作用に苦しむか興奮状態になるらしい。


あぁ、そっか…だからみんな…

"今すぐここから出ていくんだ"
"うっざ…帰れよ"
"精神的に不安定なんだよ"
"変な物飲まされたりしてない!?"


……ごめんね。
知らないところで必死にあたしを守ろうとしてたんだね。

そしてあたしが投与されないのは、みんなのおかげなのだと思うと更に涙が溢れてきて視界が歪む。


しかし、泣いてる場合じゃないとグッと涙を拭いてまた画面に向き合い、γ−グリフェプタンについて調べる。


だが、出てくるのは投与実験の事ばかりでγ−グリフェプタンを中和する物などのデータはなく、投与後のケアはする気がないのが手に取るようにわかった。

つまり、廃人になるまで散々使って棄てるつもりなんだろう。シャニ達の扱いはMSのパイロットではなくMSの一部として扱われるらしく、その結果シャニ達はブーステッドマンまたは生体CPUと呼ばれているみたいだ。


あぁ、頭がおかしくなりそうだ。なんでこんな事になったんだろうと一通りデータファイルに目を通したあたしは、パソコンを閉じて頭を抱えた。



「エルナ?入りますよ」

「っ!?あ、はいっ…」

「おや?顔色が余りよくありませんね。体調が悪いんだったら遠慮せずに言ってくれていいんだよ?」

「あ、いえ…ちょっと疲れてるだけです。それでなにか用でしょうか?」

「あ、そうだった。ちょっとエルナに頼みたい仕事があってね。なーに、簡単な仕事だから大丈夫」



そしてあたしは、アズラエルさんの言葉にゆっくりと頷いた。だって、この人に逆らったらシャニ達になにをされるかわからないから。




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