◆◇◆◇◆
・・・頑張れ、頑張れ。
あたしは、大丈夫。
いっぱい笑って、いっぱい嘘を付いて…もっとアズラエルさんに信用してもらわなくちゃ。
「どうぞ、アズラエルさん」
「ふふ、ありがとう。エルナもここに座るといいよ」
「ありがとうございます」
アズラエルさんから預かった薬は、どうやらかなり貴重な薬だったらしく…ティキが驚いていた。
しかも、副作用も殆んどなく…ティキの病状を抑える物だと聞いて、心のそこから安心した。だけど、ティキからしたら逆に何かありそうで不安らしい。
それが、その結果がこれだ。
「うん、エルナがいるだけで空気が軽くなっていいね。バジルール少佐もそう思うだろう?」
「・・・はぁ」
「君も飲むかい?」
「いえ、私は・・・」
「用意しますね」
「・・・あぁ、悪いな」
アズラエルさんが用意したと思われる服を着せられ、アズラエルさんの傍に置かれ…たまにお茶等の雑用をさせられている。
本当に何も知らないあたしなら、特に何も思わずにこの雑用をこなしただろうが…全てを知っている今、正直色々とキツイものがある。
なんであたしが、この人に尽くさなくちゃいけないんだ。とか、どんな事でもやると意気込んだわりに、既に心が折れそうだ。
だけど、そう簡単に投げ出す訳にはいかない。必死に笑顔を取り繕って…アズラエルさんに言われた通りに動いた。
「どうぞ、ナタルさん」
「あぁ、ありがとう」
「よしよし。じゃあ、エルナはこっちにおいで」
「はい」
「やっぱり、エルナは軍服よりこっちの方がいいね。とても似合ってるよ」
「ありがとうございます。そう言って貰えて、あたしも嬉しいです」
あたしの髪を撫でながら、至極満足そうに笑みを浮かべるアズラエルさんに、あたしも必死に笑顔で応える。
最初からあたしに用意されていた軍服も、色々と変だとは思ってたけど…やっぱりアズラエルさんの趣味だったみたいだ。
確かに、可愛らしい服だけど…この場で着るような服ではない。それに…こういう可愛い服は着た事がないし、着慣れていないので少し恥ずかしい。
そんな事を思っていると、白衣を着た人がブリッジに現れアズラエルさんに耳打ちをすると、少し行ってくるねと言うとアズラエルさんがブリッジから出ていった。
・・・ティキやシャニ達に何かあったのかな。
そして、アズラエルさんがいないのならと…部屋に戻るのでアズラエルさんが戻って来たら、何かあれば呼んで下さいと伝えて下さいとナタルさんに頼み、重い足取りで自分の部屋へと戻った。
※特殊医務室内
(体調はどう? 落ち着いた?)
(エルナをどうするつもりな訳?)
(人聞きが悪いなぁ。僕はエルナが必死にお願いして来たから、あの薬を渡してあげたのに)
(エルナは、何も知らないんだから適当な薬でも渡しとけば済むはずだろ)
(それもそうなんだけど、動けなくなられるのは困るし。それに、エルナに信用して貰いたくてね)
(相変わらず、汚いやり方だな)
(その甲斐あって、可愛い可愛いエルナは僕の言いなりだ)
(はっ、なに? 道具としてじゃなく、エルナを気に入ったとでも言う訳?)
(尽くしてくれる子は嫌いじゃないね)
(はっ…命令を聞いてくれる子の間違いだろ)
(ふふん、もちろんティキも好きだよ。よく働いてくれるからね)
(・・・言ってろ)
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