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ティキが持ってきてくれたデータに目を通して、色々な薬の調合を考えている内にかなりの時間が経っていた。
あ、随分前に運ばれて来た食事の事も忘れてた。
そして食事の中から簡単に摂取出来るレーションを飲みながら、頭を抱える。
シャニ達の進行状況は、把握出来たし。抵抗薬については、キラからの助言もあって、色々と試作出来るけど。
…ティキの為の薬がどうにもならない。
"延命治療薬がないと生きていけない"
前にティキが言ってた事は、本当で…いつ死んでしまうかわからない状態だった。言い方は悪いけど、電池切れの機械に外部から無理矢理電気を供給している状態だ。
"本当ならエルナには、見せたくなかったんだけどね"と、このデータを受け取った時の事を思い出す。
もう自分の身体が手の施しようがないのを知ってたんだ。
・・・なら、せめて"延命治療薬"の副作用を少しでも減らしたいと思った。
だけど、今日はこのくらいにしとかないと…あたしも怪我を早く直さないとだし。
そしてPCにパスワードを掛けてから、電気を消してベッドに横になった。
しかし、ドアの外から僅かに声がしてすぐに起き上がる。そして、ドアを開けるとそこにはずっと姿を現さなかったクロトがうつ向いたまま立っていた。
「・・・クロト? どうしたの? 具合でも悪っ」
「ごめん」
「えっ?」
「僕が、僕のせいで…エルナが怪我をしたんだ。だから合わせる顔がなくてっ」
「おいで、クロト」
・・・そっか。
ずっとクロトが姿を見せなかったのは、あたしの事で自分を責めてたからだったんだね。
未だにうつ向いたままのクロトの手を引いて、部屋に入りゆっくりと座らせるとクロトがギュッと拳を握った。
そうだよね。
クロトからしたら、自分のせいだって思っちゃうよね。本当は、勝手に助けたあたしのせいなのに。
「ごめんね、クロト」
「なんで、エルナが謝るの」
「クロトは、何も悪くないからだよ。あたしが弱いクセに余計な事をしちゃったから」
「ちがっ…僕が」
「本当にごめんね。目の前で攻撃されたりして…」
「嫌だよ、もう…もっと僕が強くなるし、いっぱい倒すから…いなくならないで…おねがい」
駄々をこねる子供の様に、あたしにすがり付いて泣くクロトに胸が痛んだ。
だけど、それ同時にやっぱり無茶をしてでもあの時、クロトを守れてよかったと思った。
そしてゆっくりとクロトの頭を撫でると泣き腫らした赤い目でクロトがあたしを見上げた。
「クロト、痩せたね」
「エルナがいなかったから、こわくて…なんか食べれなかった」
「今は、いるよ。ほら、残り物だけど食べな」
「ううん。今はいらない」
「どうして?」
「もう、エルナがいればいいから」
・・・・・。
クロトもシャニとオルガと同じ事を言うんだね。
やっぱりあたしがいなかった間、3人はかなり精神的に追い詰めてられてしまったみたいで…ズキリとまた胸が痛んだ。
※ベッドで一緒に寝てる
(ねぇ、エルナ?)
(ん、なに?)
(いなくならないでよ)
(うん、わかってるよ)
(僕のそばにいてね)
(うん)
(エルナがいない部屋がこわかった)
(部屋に行ったの?)
(何回も行ったよ。エルナがいるか確かめに)
(・・・そっか)
(だから、ドア開けるのもこわかった)
(大丈夫。ちゃんといるから)
(当たり前だよ。エルナのばーか)
(ふふっ、ごめんね)
.
※ティキが出張ったし、やっぱりクロトは可愛い
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