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僕の為に必死に言葉を選びながら話すエルナに、やっぱり不思議な子だなと思った。
なんでエルナにこんな話をしたのかわからないけど、エルナの言葉に凄く救われた気がした。
「エルナ、ありがとう」
「…っ!あ、あたしは…お礼を言われる様な事はしてない」
「エルナの言う通りだよね。僕は僕で…僕の両親は両親なんだ」
「う、うん…」
「ごめんね。本当は、エルナが話があるって来てくれたのに…僕が話しちゃって」
「えっ…ううん、全然平気」
僕の言葉にエルナがふるふると頭を振るとすまなそうな顔をしたままうつ向いてしまった。きっとまたオーブを攻めた事を悔やんでいるんだと思う。
それにカガリと少しだけど話をしたみたいだし。
うつ向いたまま拳を握っているエルナに近付いて、ゆっくりと顔を上げさせると悲しそうな瞳がゆらゆらと揺れていた。
「ごめんね。エルナに話すべきじゃなかったね」
「…違うの。あたしはなんでこんな無力で…何も出来ないんだろうって」
「それは僕だって同じだよ」
「…違うっ!キラはあたしを助けてくれた…信じてくれた。でもあたしはっ…!」
「エルナも僕を信じてくれたでしょ?だから、そんなに自分を責めないで」
きっと、エルナを地球連合軍に返したらまた戦う事になると思う。正直、僕だって戦いたくないし…出来る事ならこのままアークエンジェルにいて欲しい。だけど、エルナには帰らなくちゃいけない理由があるから…。
マリューさんの提案は正直無謀だったけど…エルナはお願いしますと震えた声で頭を下げていた。
しかも僕等に出来る事は、逃げて来たエルナ達を収容するくらいでほとんどはエルナが動かなくちゃならない。それもエルナたった1人で。
逃げ出すチャンスもそう何回もある訳じゃないし、抵抗薬が出来なければ逃げ出す事も出来ない。最悪、こっちの施設でって事も可能だろうけど…。
「エルナ、記憶力はいい方?」
「え?」
「試薬作ってたって言ったでしょ?少しだけど僕も協力出来るかなって。劇薬の名前とか」
「…γ−グリフェプタンの成分なら覚えてる」
「詳しく教えて。こっちでも出来る事はしたいから…最悪、薬のデータを持ち去れなくてもアークエンジェルに来れるように」
「そこまでしなくても…あたしが」
「僕がしたいんだ。エルナとエルナの大切な人が早く解放される様に」
「…っ、ありがとう」
そう言いながら、必死に泣くのを我慢しているエルナにまた守りたいものが増えちゃったな…と心の中で思った。
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