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あたしがシャニ達を守ろうとしてるのと同じで他の人も自分の大切な何かを守る為に戦ってるんだ。
ディアッカも言ってたじゃないか…みんなも大切な何かの為に戦ってるって。
…死んでもいい。あたしが死んでシャニ達が助かるなら…それでもいいって思ってた。でもあたしが死んでも…シャニ達は助けられない。
「エルナ?」
「…っ、なに」
「立場は敵同士かもしれない…また戦う事になるかもしれない。でも僕は、エルナを敵だと思わないよ」
「…あたしだって、戦いたくない。ナチュラルとかコーディネーターとか…同じ人間なのに。でもあたしは戦わないと…いけないから」
「貴女の意思次第では、アークエンジェルに身を置く事も可能なのよ」
「…マリューさん」
「ごめんなさいね。盗み聞きするつもりはなかったんだけど…」
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不意にドア開いたかと思ったらすまなそうな顔をしたマリューさんがそんな事を言いながら部屋に入って来て、ビクリとエルナの体を跳ねた。
マリューさんを怖がっているのか、はたまたマリューさんの言葉を怖がっているのかはわからないけど…エルナの瞳はゆらゆらと揺れていた。
そんなエルナにマリューさんは困った様に笑うとゆっくりとこっちに向かって来て、エルナの表情が強張る。
「キラくんから話は聞いているわ。貴女や貴女の大切な人がどういう状況なのかも…」
「・・・・・」
「正直、そんなところへ貴女みたいな子を帰すなんてしたくないわ。だから、逃げ出して来なさい」
「マリューさん…」
「さっきまでみんなで話していたの、どうしたらいいかって…。彼女も私達と同じ戦争の被害者よ、だから黙って帰すなんて出来ないでしょ?」
「…あんな話、信じるんですか」
「えぇ、今の貴女を見れば嘘じゃない事なんてわかるもの」
「だけどマリューさん、逃げ出すって…どういう事ですか?」
僕の問いにマリューさんがコクりと頷くとエルナに優しく話し掛けた。
マリューさん達の提案は、至ってシンプルで…MS搭乗時に隙を見て全員で逃げ出して来いとの事だった。きっと戦うハメになるだろうからと付け加えて。
だからもう少し詳しく状況を教えてくれないかしらとマリューさんが控え目に言うと、エルナは少しなにかを考えるとゆっくりと頷いた。
「…ありがとう。私達を信じてくれるのね」
「…先にあたしを信じてくれたのはあなた達だから」
「そう。じゃあまずは、自己紹介から…私はマリュー・ラミアス。この艦アークエンジェルの艦長よ」
「エルナ・アガレスです。詳しくはわかりませんけど、階級は少尉だったと思います」
その後、エルナはマリューさんの質問に落ち着いた様子でしっかりと答えていた。
それを僕はただ見守っていた。
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