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キラが出て行った後の部屋は、なんともいえない空気だった。

ディアッカはあぁ〜…なんて言いながら額に手を当てたまま天を仰いでるし、青髪の人は拳を握ったまま険しい顔をしているし…あたしは意味がわからなくてどうしていいかわからない。



「なんつーか…とりあえず、よかったな」

「…よくはないでしょ」

「まぁ…そりゃそうか」

「敵のあたしを帰すメリットなんてないはずでしょ…むしろ、デメリットしかないのに!」

「お、落ち着けって!」

「やだ…これ以上優しくしないでよ!敵だと思ってるならそれなりの扱いをしてよっ!」



…おかしい!おかしいよ!

いくら何も知識がないあたしでもわかるよ!普通に考えて捕虜を帰すなんておかしい。それ以前に拘束もされてないし、扱いがおかし過ぎる。

っ…あたしはこの人達を倒してまで…シャニ達を助けなきゃならないんだ。

決心が鈍るから…あたしにはまだ覚悟が足りないの…だから優しくしないで。あたしは、あたしは…シャニ達の為ならっ…

っ、こんなんじゃ…こんなあたしじゃ助けられない。シャニ達を…ティキを助けるなんて無理だ。



「お、おいっ!何してんだよ!」

「っ!もうあたしは何も情報も持ってない!それに…こんな気持ちじゃ誰も助けられない!だったらっ…だったらあのままクロトを守ったまま死にたかった!」

「お、落ち着け!急にどうしたんだよ!」

「…もうっ、優しくしないでよ!お前は敵だって…拷問でもなんでもしてよ。こんなんじゃ…守れない!敵が敵に見えなくなるっ!何も聞きたくない!見たくないっ…やめてよ!!」



ベッドから立ち上がるあたしをディアッカが止めようとするが必死に抵抗する。

…何も知らないから、戦えた。相手が誰とかそんなのもわからないから戦えて、命を取るつもりはなくても簡単に引き金を引けた。

だけど…いざ、こうしてディアッカに会って…そのあと戦えるかと言われたらあたしには無理だ。きっと躊躇してしまう。

っ…もう頭の中がぐちゃぐちゃでどうしていいかわからない。シャニ達を助けたいのに…守りたいのに…なんであたしはこんなところにいるの。

どうして…あたしを帰すなんていうの。あたしは、敵じゃないの?なんで優しくするの?

もうわけがわからなくて痛む体を無視して宇宙にでも飛び出してやろうと、部屋から飛び出そうとしたらタイミング悪くキラが戻って来て勢いよくぶつかり無重力のせいで跳ね返るあたしをキラが抱き寄せた。





(っ…離してっ!)
(…エルナ、落ち着いて)
(キラくん…彼女は)
(…混乱してるんだと思います)
(もう…やだっ…やだよ)
(大丈夫だから)
(あたしが守らないと…戦わないと)
(今は、戦わなくていいんだよ)
(戦わなくて…いい?)
(うん。だから少し休んで)
(…あたしはっ…あたしは)

※情緒不安定なヒロイン



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